DEUCE2 ポルノストリート in N.Y.

70年代末のニューヨーク〜パンク・ロック、ウーマン・パワー、映画への夢、消えゆくポン引き……第2シーズンは革命篇だ!

The Deuce Season2
2018年 HBO カラー 58〜84分 全9話 HBO スターチャンネルで放映
クリエイター:ジョージ・ペレカノス、デヴィッド・サイモン 監督:アレックス・ホール 他
出演:ジェームズ・フランコ、マギー・ギレンホール、マルガリータ・レヴィエヴァ、エミリー・ミード、アーマンド・アサンテ

 第1シーズンから5年後、つまり1977年のニューヨーク。コッチ市長キモいりのマンハッタン浄化計画が始まろうとしている頃。ヴィンセント(ジェームズ・フランコ)はディスコ「365」を成功させ、彼女であるアビー(マルガリータ・レヴィエヴァ)にバー「ハイハット」をまかせている。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファンだったアビーは、最新流行のパンクロックに夢中。ローリー(エミリー・ミード)はポルノ映画のアカデミー賞で助演女優賞を獲得し、ハリウッドに誘われる。キャンディ(マギー・ギレンホール)は、自分で監督作を作ることを決意して資金集めに奔走、ポーカーでひと儲けしたフランキー(ジェームズ・フランコ二役)を共同プロデューサーに迎える。町へ戻ってきたアシュリー(ジェイミー・ニューマン)はアビーと共に娼婦たちを守るための運動を始める。黒人のポン引きたちは、徐々に自分たちの存在価値がなくなりつつあることを感じ始めていく……。

 前作では、タイムズスクウェア(デュース)で飲食店や風俗ショップを成功させていくヴィンセントの立身出世物語と、街角に立つ娼婦とポン引きたちの関係が同時並行で描かれていた、今度は徐々に力をつけてきた女性たちが、パンクロックと共に立ち上がる「革命」篇だ。アビーは、運動に夢中になっていくにしたがって、ヴィンセントは次第に意気消沈していき、健全な家庭生活を夢見るようになる始末。
 ヴィンセントの店から独立して店を始めるゲイのポール(クリス・コイ)の恋愛模様や、市内浄化作戦の担当者が実はゲイだったりといったサブストーリーもあるが、ここはまだエイズが発生していない時代。おそらくそのあたりはシーズン3のテーマになるのだろう。

 女性が主眼であることは、第1シーズンで編集担当だったアレックス・ホールが最初の2話を監督した以外、残りのエピソードはすべて女性監督が担当していることでもわかるが、さらに主題歌にも力が入っている。前回のカーティス・メイフィールドとうって変わって、エルヴィス・コステロのデビューアルバムから「ディス・イヤーズ・ガール」が毎回主題歌として流れるのだが、なんとオリジナル曲にわざわざ女性ボーカルをミックスしているのだ(なんでも、コステロ承認のもとでワイルド・ベルなるバンドのナタリー・バーグマンの歌が加えられたそうな)。既成曲を使うだけでなく、テーマに合わせてアレンジ&リミックスまでしてしまうとは。クリエイターの本気度がよくわかる裏話だ。もちろん、劇中でさりげなく流れるこの時代の音楽は、パンク世代にはたまらない。ざっとあげると、トーキング・ヘッズ、テレヴィジョン、ザ・ダムド、ジョナサン・リッチマン&モダンラヴァーズ、パティ・スミス・グループ、ラモーンズ、ルー・リード、イギー・ポップ、ストラングラーズ、イアン・デューリー&ブロックヘッズ、グラハム・パーカー&ザ・ルーモア、プリテンダーズ、スージー&ザ・バンシーズ……などなど、毎回盛りだくさんだ。

 プロデューサーでもあるのに第1シーズンでは脱ぎまくっていたマギー・ギレンホールは、さすがにヌードシーンはやめたようで少し安心。それでも、キャンディがハリウッドのプロデューサーから小切手と引き換えにフェラ・サービスを求められるという、まるで近年話題のセクハラ・プロデューサー事件を思わせる展開を含めて、男性上位の映画業界でなんとか監督第1作を作ろうと頑張る“映画少年”ならぬ“映画娼婦”を熱演する。タイムズスクウェアでゲリラ撮影をしていて主演男優(ポン引きなんだが)が警官に捕まって暴行される。たまたま撮影の様子を見ていたマフィアのボスがそれを見て「すごい迫力だ」と感心して出資を承諾したり、屋外でセックスシーンを撮っていてパトロール警官にとがめられて「学生映画の撮影なの」と言うと、「見学させろ」と黙認してくれ「この街が大好きよ!」とキャンディが叫んだり、映画作りの一連のエピソードはすこぶる楽しい。まさに「ヌーヴェル・ヴァーグ in DEUCE」だ。ちなみに、彼らの事務所には『天国と地獄』『ガルシアの首』『突然炎のごとく』のポスターが貼られている。
 
 商売道具の娼婦が逃げ出したり、女優になって独立したり、風紀取り締まりなど周囲の締め付けが強くなってきてポン引きたちの立場はどんどん弱くなる。スコセッシの『タクシー・ドライバー』(76)の世界は、徐々に変化しつつあるのだ。それに合わせてか、なぜかハーヴェイ・カイテル主演の映画が登場する。誰も客がいない映画館で『ブルー・カラー/怒りのはみだし労働者ども』(78)が上映されていたりするのだが、もしかして『タクシー・ドライバー』は許可が出なかったのかも……。映画館には『マッド・フィンガーズ』(78)の題名も見える。

 第1シーズンよりもヘアやチンポの露出は減ったが(どうせ日本ではボカシが入ってますが)、音楽と女性パワーを明らかに増大させたシリーズは、ちょうどポール・トーマス・アンダーソンの『ブギーナイツ』(97)の時代とシンクロし、ポルノ映画界の黄金期へと移行していくと予想される。だって、ローリーやキャンディが(初めてロサンゼルスへ行って)参加するハリウッドのポルノ映画賞(?)授賞式の様子なんて、セットも衣装も、どこかの日本アカデミー賞よりよっぽど豪華なのだから。

by 無用ノ介

(同作シーズン1についてはAmazon Primeで視聴が公開されているが、スターチャンネルはAmazon Prime内のオンデマンドサービス「Star EX」で同作を公開しているため、現在プライム会員への無料公開はされていない)

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