逃亡者 デッドエンド(吹き替え版)

ライフ・オン・マーズのジョン・シムが再びマンチェスターでひどい目に!

Prey Series 1
2014年 イギリス カラーHD 45~47分 全3話 Red Production ITV WOWOWプレミアにて放映 Amazon Prime / U-Nextで視聴可能
クリエイター:クリス・ラント 監督:ニック・マーフィー
出演:ロージー・キャバリエロ、ジョン・シム、クレイグ・パーキンソン、アナスターシャ・ヒル、ベネディクト・ウォン、エイドリアン・エドモンドソンほか

 ひどい日本語タイトルのおかげで、中身を見ないで書いている紹介には、あの『逃亡者』の英国版リメイクだとか、内容が似ているような記述が見受けられるが、甚だしい誤解である!60年代のアメリカのTVドラマ「逃亡者」<The Fugitive>(もしくはハリソン・フォードによる93年のリメイク映画)とはテーマも内容もまったく関係がない。
 マンチェスターを舞台にした刑事ドラマで、実は主人公は事件を担当するおばさん刑事のスーザン・ラインハート。このドラマは、本国ではシリーズ1とジリーズ2が続けて制作放映されており、全く違う話だがロージー・キャバリエロ演じる、強烈なおばさんスーザンが両方で主人公として登場する。ただし、ドラマの作りとしては主人に追い詰められる犯人?いや獲物(Prey)の側から描かれるという特殊な構造で、その「獲物」がシリーズ1ではジョン・シム、シリーズ2では、フィリップ・グレニスターという時空警察(ライフ・オン・マーズ)コンビが演じているのだ。
 キャバレロ演じるスーザンは、西北イングランド人にありがちなのか(「ハッピー・バレー」を思い出す)頑迷で思い込みが激しい人間で、プライベートには元夫の家族をストーキングしていたりして危ないデカである。もちろん、自分の元妻と息子が惨殺された現場で確保された刑事、マーカス(シム)を最初から犯人に違いないと決めつけていて、ろくに捜査する気もない。相棒のアジア系の刑事チャン(ウォン)や副本部長(エドモンドソン)からも事件を任せて大丈夫かと心配されるが、それもどこ吹く風。
 しかし、移送途中の交通事故を利用してマーカスが逃げ出したことで、話は思わぬ展開を見せ始める。マーカスの逃亡劇は絶体絶命だが、途中マーカスを捕まえ損なったスーザンは、その話しぶりから自分の「決めつけ」に疑いを抱き始める。なにせ頑固なので、一度疑いだすと今度は、ありえなそうな疑惑にでも諦めないで食らいつく。そこがどうやら本筋の主題らしい。
 のっけから、檻の中で逆立ちをしているマーカスから始まるドラマは、実に予測不能な展開で、しかもITVらしく余韻を残すよりはコンパクトに編集されていて展開が早い。その意味で、引き込まれる。
 クリエイターのクリス・ラントは、このドラマで知られるようになった人物。監督のニック・マーフィーは短いシリーズの怖いドラマが得意なようで、つい最近もナショジオが製作したエボラ・アウトブレイクドラマ「ホットゾーン」で3本、BBCの2019年末の話題作「クリスマス・キャロル」でも全3本を監督している。
 興味を最後までつなげる脚本ではあるが、問題がないかといえばそうでもない。
 そもそもジョン・シム演じるマーカスはマンチェスターの現役刑事である。それなのに元妻の住む元自宅に大事な捜査資料であるフロッピーを置き忘れて夜中に戻り、元妻が惨殺されているのを発見すると、凶器のナイフやいろんな場所を触りまくった挙句に、通報もせず外に飛び出して小川に飛び込んでビショビショになっちゃう。そんな刑事いる??
 なんとか逃亡し、監視カメラをかわすまではいいが、怯える証人から秘密を聞き出す奥の手は、いつも「俺は元妻と、子供を殺されたんだせ!」という泣き落とし。とほほだ。北西イングランドの男は、少々感情に流されやすいのかもしれないが、情けなさすぎる。
 マーカスの親友で相棒、さらに事件の中盤から不可解な行動をとるショーン(パーキンソン)は、さらにヘボヘボだ。怖い上司やスーザンのいいなりで、どんどん追い詰められてしまう。
 最初にこの二人は、酔っ払って登場するのでダメキャラなのかもしれないが、そのほかの刑事たちも優秀な人材は一人も登場しない。リアルといえば、それまでだが誰にも感情移入しずらい展開である。
 WOWOWが最初に放送するドラマがそうなのか、このドラマも字幕版が見当たらずに、致し方なく吹き替え版を視聴したが、吹き替えは地味ながら問題なく楽しめて秀逸だ。
 それにしても、いくら(日本人から見て)スターが出ていないからと言って、連作なのにシリーズ2の方は放送しないというのはわわいそうだ。「ライフ・オン・マーズ」や、「キケンな女刑事 バック・トゥ・80’s」のボス(ハント警部)、「マッド・ドッグス」(英国オリジナル版)のクィンなど、ジョン・シムとは対をなす典型的な北部イングランド親父、フィリップ・グッレニスターが意地の悪いスーザンに追い詰められる姿を是非見たい!
 
by 寅松

※(本サイトでは通常、全て字幕版を紹介しているが、本作に限っては日本で初放映したWOWOW以来字幕版が製作された痕跡がなく、Amazonでも字幕版が供給されていないため、吹き替え版視聴による感想であることをお断りしておきます)

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