アトランティックス

ゴダール+タルコフスキー=シェイクスピア!? 灼熱のアフリカを舞台にした真夏の怪談

Atlantique aka Atlantics
2019年 フランス、セネガル、ベルギー カラー ビスタ 106分 Les Films du Balほか Ad Vitam/Netflix Netflixで配信
監督:マティ・ディオプ 脚本:マティ・ディオプ、オリヴィエ・ドゥマンジェル
出演:ママ・サネ、アマドゥ・ムボウ、イブラヒマ・タオーレ、ニコル・スグー、アミナ・カネ

 アフリカ最西端、セネガルの首都ダカール、超高層ビルの建築現場で働くスレイマン(イブラヒマ・タオーレ)とアーダ(ママ・サネ)は恋人同士だが、海岸の廃墟でキスしていると邪魔されてしまい、アーダはいつものように夜会おうとスレイマンに告げて帰宅する。しかし、アーダは、イタリアで働くビジネスマンのオマールと結婚することになっていた。その夜、町の若い男女が集まる海辺のバーには女しかいなかった。3か月も賃金未払状態が続く男たちは職を求めてスペインへ船で渡ったのだ。
 アーダはオマールと結婚するが、その夜、彼らの寝室の豪華なベッドが放火される。刑事イッサ(アマドゥ・ムボウ)は犯人はスレイマンだとしてアーダを追及する。そんなころ、超高層ビルのオーナーの自宅に大勢の女たちが侵入し未払い賃金を支払えと脅す事件が起きる……。

 有名なラリーの終点地として知っているぐらいのダカールの風景が素晴らしい。ドバイや中国にありそうなヨットのセール型の超高層ビルが本物なのかどうかは知らないが、まるでバベルの塔だ。町のすぐそばに迫る海、波、その存在感が素晴らしい。望遠レンズの魔力だろうが。まるで、そこで暮らす人々の心情を毎日表しているかのように、時に激しく波を立て、時にどんよりと重そうに渦巻く。
 なんだか、ゴダールとタルコフスキーがアフリカでシェイクスピアを映画化したかのようだ。
 映画をジャンル分けしてしまうと、この映画は著しくその魅力を失うだろう。前半は社会派のラヴロマンスのようで、中盤は刑事ドラマ、そして徐々に幽霊譚になり、最後は復讐ドラマに……しかも舞台は墓場だ!

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 内容を読み解けば、船でスペインへ向かった男たちは遭難して溺死し、残された女たちに乗り移って賃金を払わなかった会社社長を脅す。女たちはみなどこからともなく海岸へ集り、白い眼になって(肌が黒いので目立つ!)社長の家にいつの間にか入り込んで脅迫する。すっかり怯えあがった社長は3200万(セネガルフラン?)を支払い、女たちに命令されるまま男たちの墓を掘らされる……。
 宇宙人のようにスタイルのいいヒロイン、フランスの下町あたりにいそうな彼女の友人たち(名前はファンタやディオール。スマホで写真をSNSへあげてる)など、ダカールでは日常的なことなのだろうが、すべてがSF風に見える。そして、日常的によく意識を失う謎の敏腕刑事(?)の存在も面白い。不条理な事件が起こり、毎日渋滞だらけのダカールは、まともな人間では生きていけない世界なのだといたいのかもしれない。

 海をもう一人の主人公にしたような撮影、ありきたりのシンセサウンドに呪術的なリズムを重ねた音楽もセンスがいい。と思ったら、なんとカンヌ映画祭グランプリ受賞(パルムドールの次だ)、撮影はLA批評家協会賞を受賞していた。各国の映画祭で上映されたのち、ネットフリックスで11月29日から世界配信されたようだ。セリフもフランス語だが、字幕は英語版を基に制作したようでタイトルも「Atlantics=アトランティックス」となり、ヒロインの名も字幕は「エイダ」になっている。みな「アーダ」と呼んでるんだけど……。

by 無用ノ介

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