オンランシネマ

ホットガールズ・ウォンテッド

18になったらマイアミへ~ アメリカのネット・ポルノ女優事情

Hot Girls Wanted
2015年 アメリカ カラー ビスタ 84分 Netflixで配信
監督:ジル・バウアー、ロナ・グラドゥス 構成/編集:ブリタニー・ハッカビー
出演:エヴァ・テイラー、ステラ・メイ、ジョン・アンソニー

 2015年のサンダンス映画祭で話題になったネット・ポルノ時代の新人ポルノ女優の実態に迫ったドキュメンタリー。
 キーワードは「ティーン・エイジャ―」と「マイアミ」。「ティーン・エイジャ―」はNET検索件数で世界最大級。男たちは〝10代〟が好きなのだ。そしてアメリカでは18歳になれば何をしてもOK。18歳になった少女たちは何かを目指して家を出る。女優エージェンシーHUSSIE MODELSの男は「毎日誰かが18歳になるし、誰かがポルノ女優を目指す」とうそぶく。人材には事欠かないのだ。
 エージェントが用意した家に8人の新人女優たちが共同生活する。日本でもよく外人ファッションモデルたちが六本木のマンションで共同生活してる(キャメロン・ディアスが有名だ)が、アメリカじゃポルノ女優も同様なんだね。

 ただし、花の命が短いのは世の常で「女優ができるのは通常1~3か月。頑張って半年。1年もてばトップ女優だ」。彼女たちの目標は「トップになっていつかロサンゼルスに行ってポルノ映画に出る」ことだそうだ。
 なぜマイアミなのかといえば、カリフォルニア州ではポルノ映画撮影時にコンドーム着用が義務付けられたので、規制のないマイアミが脚光を浴びた。そしてツイッターで応募してくる18歳の少女たちにエージェントは「マイアミへの飛行機代」を提供して“吊る”んだそうな。

 製作・監督は女性コンビなので露出は少な目だし作りは上品。ぼんやり見ていると普通のリアルティTVかと思ってしまうが、彼女たちは日本でいえばハードコア・ポルノ女優なわけで、あんなこともこんなことも……NET検索すれば彼女たちの“作品”は簡単に見ることが出来るので、素顔の彼女たちと“作品”の落差には驚かされる(ご鑑賞は自己責任で)。
 
 男目線でいえばスタイル抜群のメガネっ子「エヴァ・テイラー」ことレイチェルが気になるが、主にフィーチャーされているのは、ニキビ跡も若々しい芸名「ステラ・メイ」ことトレッサ。テキサスの実家ではお父さんとハンティングに行って猟銃をブっ放すワイルド娘なのに、ポルノ女優をしながらボーイフレンドもいる。お母さんは娘が何をしているか気づくが、お父さんには話せない……。この肉薄ぶりは女性監督じゃないと無理だろう。

 それにしても彼女たちが赤裸々に話してくれる新人ポルノ女優のギャラ事情が、意外なほどに安いのに驚く。新人のギャラは1本平均800ドル、〇出しで追加100ドル(でも緊急避妊ピルが40ドル)、縛りで2500ドルとか……詳しくないので知らないけど日本のほうが高いんじゃないんだろうか。トレッサは4か月で2万5000ドル稼ぎ、手元に残ったのは2000ドルだったというが、いまは結婚してレストランを経営しているそうだ。
 
 それにしても、どう見ても30代か40代にしか見えない老け顔のラテン系“ティーン・エイジャ―”もいてそれなりに商売になってるのには驚く。さすが世界は広い。

 「クリームパイ」など業界隠語も紹介される。「ミルフ=MILF」なる隠語は、字幕では「セクシーな大人の女」になってるが、「Mom I’d like to Fuck」の略で、要は「年増」のこと(日本ではジャンル名としては一般的に「熟女」と訳される)みたいだ。

 ネトフリでは人気が高かったようで、ミニシリーズ『ホットガールズ・ウォンテッド:オンライン・ラブ』(2017)が作られた。

by 無用ノ介