ローマ法王フランシスコ

ヴェンダースとパティ・スミスが贈る!21世紀のフランチェスコの言葉たち

Pope Francis: A Man of His Word
2018年 スイス・バチカン市国・イタリア・ドイツ・フランス カラー ビスタ 96分 Netflixで配信
監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ

「今日の貧困は行き過ぎている。ほんの少しでも質素に生きることができないか、みなが考えるべきです」
 2013年にローマ教皇に就任しフランシスコ(フランチェスコ)を名乗ったアルゼンチンの司教ホルヘ・マリオ・ベルゴリオをヴェンダースが追ったドキュメンタリー。
 題名通り「言葉」だけを武器に、世界中を回り、アメリカへはコンパクトカーで乗り込み「ミスタービーンの車みたいだ」と笑われながらも、国連で核兵器廃絶を、議会では武器売買をやめるよう演説して一部の議員に涙を流させるような素朴な“戦い”の日々を伝える。
 ロックを歌ったり、質素な生活で知られる教皇の素顔は、インタビューの際の正面からのカメラでじっくり味わえる。とにかく目力が強い。まばたきもしない。そしてユーモアがある。
 ヴェンダースは、そういった軽い部分は重視しないで、極めて真面目一本やりにまとめている。まあ、あまり受けを狙った軽い教皇と思われるのも何だろうから、そのスタンスは悪くない。そして、彼が尊敬する聖人アッシジのフランチェスコを白黒の再現映像で見せる。何度も映画化されているが、こうしてシンプルに客観的に白黒で見せてくれると味わい深い。初めて知ったのだが、フランチェスコは中東にまで出かけて十字軍に戦争をやめるように説き、エジプトのスルタンにも面会したという。命知らずの行動にびっくりしたのか、スルタンも命を取らなかったらしい。

 21世紀のフランチェスコもパレスチナやエルサレムにも出かけていく。古びた黒い革靴の紐を解いてモスクにも参拝する。アッシジでは世界宗教会議(?)を開く。環境問題や核廃絶や聖職者の小児性愛問題にも言及する。同性愛にも理解を示し「我々は皆兄妹です 何物も差別の対象であってはならない」と説き、800年前のフランチェスコが聴いた神の声「我が家を立て直すのだ。いまにも崩れてしまう」を伝え、「生き方を変える必要がある」と唱える。
 現代社会は「実存的統合失調症」「精神的なアルツハイマー病」「みなが、必要でもないのに安心を得るために買いだめという病に罹っている」「金の亡者になるのを避けること」そして「大切なのは、3つのT 労働(トラバホ)、大地(ティエラ)、屋根(テチョ=つまり家族)」だ。
 そして、バチカンが信者だけでなく世界へ向けて、搾取を批判するメッセージを伝えた「回勅 ラウダート・シ」は、バチカンのファサードに見事な映像を照射したプロジェクションマッピングで、まさに21世紀のテクノロジーを利用した講話(?)になっている。

 刑務所をまわり、受刑者の足に接吻をする。フランコ・ゼフィレッリの『ブラザーサン シスタームーン』(1972)で、ヴァチカンを訪れたアッシジのフランチェスコに面会したときの教皇インノケンティウス3世がしたのとまったく同じだ……ただし、その場面は、映画の中だけのお話という説もある。ひょっとすると、現教皇フランチェスコは映画『ブラザーサン シスタームーン』のファンなのかもしれない。

 そして、NETFILIXお馴染みのエンディング飛ばしに対抗して、ゆっくりエンドクレジットを見て、いや、聴いてほしい。パティ・スミスが唄う主題歌「These are the Words」(これが言葉だ)を。

by 無用ノ介