マリッジ・ストーリー

ニューヨーカーが巻き込まれた 実録“ハリウッド式離婚”戦争

Marriage Story
2019年 イギリス、アメリカ カラー スコープ 136分 Heyday Films/Netflix Netflixで配信
監督・脚本:ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライヴァー、ローラ・ダーン、レイ・リオッタ、アラン・アルダ

 ニューヨークの“育ちのいいウディ・アレン”=ノア・バームバックによる離婚コメディ。普段はSFアクション映画で金を稼いでる感が強いスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライヴァーがほぼスッピンでリアルな演技を見せるので、普通の映画ファンは最初、違和感があるんではないだろうか。旧い映画ファンは、ウディ・アレンとジョン・カサヴェテスが合体したみたいで十分楽しめる。

 若い頃はお色気要員のハリウッド女優だったニコル(スカーレット・ヨハンソン)は、ニューヨークで劇団を主宰するチャーリー(アダム・ドライヴァー)と結婚して一児ヘンリー(アジー・ロバートソン)をもうけ、舞台女優として演技を磨いていたが、チャーリーの浮気をきっかけに離婚を決意する。テレビシリーズ出演のために故郷のロサンゼルスへ移ったニコルは、やり手の離婚弁護士ノラ(ローラ・ダーン)を雇う。一方、友好的な離婚ができると考えていたチャーリーは、ベテランの善人弁護士(アラン・アルダ)を起用するが、このままでは親権どころかようやく手にした演劇助成金まで奪われると気づいて、見るからにヤクザみたいな弁護士ジェイ・マロッタ(レイ・リオッタ)に頼ることにするが……。

 そこまで強烈にいがみ合っているでもなく、互いにまだ愛している部分があることを認識している夫婦なのに、ロサンゼルスの敏腕(強欲)弁護士の戦いに巻き込まれて戦闘モードに入らざるをえなくなる様が面白いのだが、これは、実際にハリウッド女優ジェニファー・ジェイソン・リーと結婚・離婚したノア・バームバックの体験が元になっていると知ればもっと楽しめる。ジェニファー・ジェイソン・リーは『コンバット』で有名なヴィック・モローの娘で、母親も女優から脚本家になったバーバラ・ターナー。離婚しようとしている娘の夫と妙に仲のいい母親とか、本当にありそうな状況が笑える。とはいえ、イタリア映画のように徹底的に離婚をネタに笑い飛ばそうとか、シニカルに結婚や家庭を描こうという意図はないので、残念ながら「ハリウッド式離婚協奏曲」にはなっていないし、“育ちのいいウディ・アレン”=ノア・バームバックには、そんな気もないだろう。
 ノラが「トム・ぺティの離婚裁判で曲の権利を半分獲った」と自慢したりするネタがもっとたくさんあってもよかったような気もする。クリスマスに妻が家族で唄う曲や、夫がニューヨークのバーで突然唄う曲が、ソンドハイムのミュージカル「カンパニー」からの歌というのが、いかにもニューヨーク派のバームバック風……なじみがないし、少々スノッブで鼻持ちならん、と思わざるをえないが、それもこの作家の個性だから仕方がない(いい歌だけどね)。
 やり手弁護士を含めて「世の中に悪い人はいない」という性善説にのっとったお話なので、最終的には少々苦いながらも「人生こんなもの。まあ、悪くはないさ」と感じさせてはくれるが……。

 関係ないが、強面弁護士レイ・リオッタの役名は、『レイジング・ブル』のジェイク・ラモッタからの連想だろうか。リオッタが名を挙げたのはマーティン・スコセッシの『グッドフェローズ』の成り上がりヤクザ=ヘンリー役だった。

by 無用ノ介

*/ Hack for Facebook Dispaly