TRUE DETECTIVE 迷宮捜査 シーズン3

マハーシャラ・アリの年齢変幻自在ぶりに驚愕する!35年に渡る記憶と愛憎の物語

True Detective Season 3
2019年 アメリカ カラーHD 55分 全8話 HBO スターチェンネルで放映/Amazon Primeで視聴が可能。
クリエイター: ニック・ピゾラット 監督:ダニエル・サックハイム、ニック・ピゾラットほか
出演:マハーシャラ・アリ、スティーヴン・ドーフ、カルメン・イジョゴ、スクート・マクネイリー、メイミー・ガマー、マイケル・グレイアイズほか

 「TRUE DETECTIVE」は、HBOが製作したドラマシリーズで、なんといってもシーズン1の評価が高い。実は、このドラマは3シーズンとも原作が小説家ニック・ピゾラットの書き下ろしが原作となっているというだけで、ストーリー的には関連性がない。出演者も監督もシーズンごとに違うので、それぞれの出来はだいぶ違う。ただ、エラスティック社のクリエイティブ・ディレクター、パトリック・クレアが手がけたアフターエフェクトによる二重露光加工全開のオープニングタイトルと、しぶいベテランTボーン・バーネットが手がけた音楽は、全シリーズ共通で、皮肉にもクオリティーを保っている。
 シーズン1がマシュー・マコノヒー、ウディ・ハレルソン主演、キャリー・フクナガ監督で、ルイジアナの身も凍るような根深い異常犯罪を描いて、2014年度のエミー賞お多数受賞したのは有名だろう。ともかく、全てにおいて非常に芸術的な作品だった!
 ところがシーズン2は、ワイルド・スピードシリーズを手がける台湾系のジャスティン・リン監督をはじめ多数の監督が関わり、主演がコリン・ファレル、ヴィンス・ヴォーンで大失敗。しょうもない出来で失笑を買った。
 そこで3年ぶりに登場したのが、本作である。
 クリエイターであるニック・ピゾラットはシーズン2でだいぶ懲りたのか、今回は若手監督のジェレミー・ソルニエ、「Dr.HOUSE」や「Xファイル」などTVの仕事が長いダニエル・サックハイムの2人だけを指名。自らも2本で監督を務めるほど力を入れている。その甲斐あってか、今回はシーズン1の怖さとは別の意味での怖さを出すことに成功しているようだ。
 しかし、その功労者は監督の力量ではなく、むしろ主演のマハーシャラ・アリの演技力と言ってさしつかえないだろう。
 「ハウス・オブ・カード 野望の階段」の油断ならないロビイスト、レミー・ダントン役を見たときは、さほど強い印象を受けはしなかったが、なにしろその後「ムーンライト」のフアン、「グリーン・ブック」のドン・シャーリーと、2本のアカデミー賞受賞作品に出演、両作品でアカデミー賞助演男優賞受賞を受賞してるという名優だ。とにかく演技がすごい。
 ドラマ自体も構成が難しい。事件自体は1980年に南部アーカンソー州の奥地で起きた、神隠しのような兄妹の失踪劇。実際には解決しなかった事件は、別事件の犯人に都合よく罪を着せて決着していたが、警察としても無視できない証拠が出たことにより1990年に再捜査をすることに。当初この事件の捜査を相棒のローランド・ウェスト(ドーフ)と共に主導したのがウェイン・ヘイズ(アリ)だが、のちに妻となる小学校教師アメリアが書いた記事に情報を流したとして、広報課へ島流しになっていた。
 上層部を説得して、捜査に引きも戻してくれたは相棒のウエストだ。2人は、今度こそ解決する決心で捜査を始める・・・。
 しかし、実際に話を語っているのは、2015年。過去の事件を掘り返しドキュメンタリーを製作中のTVディレクター、エリーザ(サラ・ゴードン)のインタビューを受けて、自らの人生を支配するに至った事件についてもう一度向き合い総括する気になった70歳のヘイズである。
 ストーリーは1980年、1990年、そして2015年を自由自在に行き来して語られ、なんと実年齢が45歳のアリは、35歳と45歳、70歳のヘイズを見事に演じ分けている。日本人には、確かに黒人の年齢は判別し難いところはあるが、それにしてもすごい!70歳の自然な演技は特に注目だ。
 ただし、シームレスに時代が行き来するので、2015年はともかく、80年と90年の違いはヘイズ(とウェスト)の髪型の違いで見わけなければならないのでなかなか大変だ。どうして、こんなに行ったり来たりするんだよ!と思っていると次第に、このドラマの本当の狙いがわかってくる仕掛けである。つまり、ドラマ全体が、ヘイズの記憶の物語なのである。
 ヘイズの記憶が怪しくなり始めると、時間の観念は徐々に怪しくなり、物語もつなぎ目も分かりにくくなる。
 そんな複雑な展開の中でも、最後まで頑迷な差別文化を温存し続けた南部の過疎地帯を舞台に、白人と黒人の相棒同士の友情、ネイティブ・インディアンの元兵士が受ける差別、プアホワイトである子供の父親や母親の抱えた秘密などが描かれる。
 そして最後には、事件を扱った書籍を出版していた今は亡き妻の亡霊の助けを借りて、一つの仮説に行き着くヘイズだが・・・。最後の結末の残酷さは、おそらくまだ老いを知らない若い視聴者には理解し難い恐怖だろうか?そして人生の最後に残る記憶とは・・・。

 ともかくもシーズン2の酷さは忘れて、十二分に見る価値のあるドラマになった。お勧めできる。

by 寅松