海外ドラマ

ホット・ゾーン

リアルすぎて、世界が引いた!なんとナショジオが手がけた、事実ベースのパンデミック・ドラマ。グッド・ワイフが世界を救う!

The Hot Zone
2019年 アメリカ カラーHD 43分 全6話 FOX 21 Televison/ナショナル・ジオグラフィックで放映 (Hulu期間限定配信)
クリエイター:ジェームズ・V・ハート 原作:リチャード・プレストン 監督:マイケル・アッペンダール、ニック・マーフィー
出演:ジュリアナ・マルグリーズ、リアム・カニンガム、ジェームズ・ダーシー、ノア・エメリッヒ、トファー・グレイスほか

 エボラ出血熱というウルトラやばい伝染病がアメリカで最初に確認されたのは、1989年ヴァージニア州のレストンの実験用動物飼育施設でのことでだった。その施設で死んだフィリピンから輸入されたカニクイザルの検体を、たまたま調べたUSAMRIID(アメリカ陸軍感染症医学研究所)の研究員が、血液中にザイール型のエボラ・ウィルスが潜んでいるのを発見したのだ。
 詳細があまり公開されてこなかった実際の事件について、1994年に出版されたリチャード・プレストンのノンフィクションを元に、ナショナル・ジオグラフィックがドラマ化を依頼した作品がこれ。
 まあ、この時からアメリカ中で大流行したという話は聞かないので(実際にアメリカ国内でエボラ感染が報告されるのは2014年のこと)そういう意味では結末が大失敗という話でないのはわかってはいるが・・、それでも十分ハラハラさせられる。
 実際のプロダクションを手がけたのは FOXスタジオだが、プロデューサーには「フラッシュダンス」「フィッシャー・キング 」「コンタクト」「インターステラー」などを手がけた映画プロデューサー、リンダ・オブストや、リドリー・スコットなどの大物が名前を連ねてており、作りは十分に重厚である。
 主演は、スコットとも「グッド・ワイフ」で大変縁が深い、ジュリアナ・マルグリーズ。USAMRIIDの研究員としてただ一人危機感を持って、アメリカの上陸した「エボラ」を封じ込めるために全力を尽くしたナンシー・ジャックス中佐を演じた。正直、彼女一人の迫力が他の俳優を圧倒している。
 もう一人はまっているのはアイルランド人俳優のリアム・カニンガム(「麦の穂をゆらす風」「ゲーム・オブ・スローンズ」ほか)。ナンシーの師匠で、70年からエボラを追い続けている専門家、ウェイド・カーターを演じる。彼は、80年代に実際ジンバブエで電気技師の指導を行っていた経験があるためか、アフリカの大地でのあきらめ顔が大変似合っている。
 ドラマの軸となるのは、エボラの真の脅威を信じて、封じ込めのために全力をつくずべきだと主張するウェイドとナンシーに対して、官僚主義や事なかれ主義に慣れきった多くの関係者が障害になる話。アメリカでエボラが広まることはあり得ないと信じきっている、同僚学者ピーター(トファー・グレイス)。使命感より家庭を大事にしろという、獣医でナンシーの夫ジェリー(ノア・エメリッヒ)。そして、なにより軍とは別に一般人への感染に対して権限を持つCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の担当者で、2人の脅威論を取り合わないトラビス・ローズ(ジェームズ・ダーシー)が立ちはだかる。
 トラビスは、実はかつてウェイドのエボラ・ウィルスのサンプル・ハンティングにザイール(現コンゴ民主共和国)へ同行し、現地で地獄を見た経験がある。それ以来、2人関係は険悪で、ウェイドが業界からハブにされるきっかけもこの対立であるらしいのだ。かつてのアフリカでの経緯が、現在(1989年)の危機の合間を縫う形で回想される構成になっている。
 ホラー度が最高潮に達するのは、ウェイドとジェリーが率いることになった処理部隊が、すでに感染が広がっていると思われる施設に残された300匹の猿を処分(ようするに殺害)する工程。そこはナショジオだけあって、胸が悪くなるほどリアルにちゃんと描写している。
 ともかく、この時蓄積されたノウハウが、今でもアメリカのエボラ対策のプロトコルに役立っているらしいのでなによりだ。お猿さんたちよ、安らかに。
 現在Huluでは35日間の期間限定で配信しているようだ。(第1話が2019.11.20まで)

by 寅松