デヴィッド・ボウイ〜最後の5年間〜

死の直前まで創作活動に従事した、ロック・アイコンの真の姿!

David Bowie: The Last Five Years
2017年 イギリス カラーHD 90分 BBC Amazon Primeで視聴可能
監督:フランシス・ワットリー
出演:デヴィッド・ボウイ、トニー・ヴィスコンティ、マイク・ガーソン、ゲイル・アン・ドロシー、アール・スリック、ジェリー・レオナード、マイケル・C・ホール、トニー・ベイジルほか

 デビッド・ボウイが亡くなるまでの5年間。世界ツアー中に倒れて、このまま引退すると伝えられていたボウイが、突然音楽制作に乗り出し、最後2枚のアルバム<The Next Day>(2013)と<Blackstar>(2016)とミュージカル<Lazarus>を制作した姿を追う。
 ドキュメンタリーとして傑出しているかと言われれば、ぜんぜんそんな代物ではない。ただ、何と言っても素材がすごいので、特にファンでなくても最後まで見てしまうだろう。そういうドキュメンタリーだ。ちなみに、この時期(それ以前からだが)ボウイ自身はメディアのインタビューや取材は受けていないので、彼の肉声は昔のものと、PVなどとして収録されたもののみだ。
 その代わり、アルバムをレコーディングしたメンバーをセッション的に集めて、ボウイについて語らせたりと工夫している。
 また、それぞれのアルバムの曲に、ボウイは気鋭のクリエイターを探し出してPVを依頼しているので、各映像クリエイターの受けた印象など、興味深い話も語られている。
 しかし、なんといっても全体の核となっているのは、60年代から一貫してボウイの相棒であり、ほとんどのレコードのプロデューサーであったトニー・ヴィスコンティの証言だろう。
 彼が英国紳士として、最後までユーモアと冷静さを失わずにボウイについて語る様は流石だと思う。最後の最後、自らが死を覚悟した上で収録した楽曲「ラザルス」のレコーディング素材を聴かせて「まさに絶好調だ!素晴らしいね」と笑顔で言ったあと、「今聴くと、歌詞が実に悲しい・・」とだけ言って言葉を詰まらせる。ほんの少し泣きそうな顔をしたところが、見どころです。
 最後のアルバム<Blackstar>と並行して、「地球に落ちてきた男」でボウイが演じた宇宙人、トーマス・ジェローム・ニュートンのその後の人生を描いたミュージカル<Lazarus>を制作していたことに関してはよく知らなかったが、そのミュージカルのニューヨーク・オリジナルキャストの主演が、「デクスター」のマイケル・C・ホールだったとは驚いた。
 ホールがどの程度ボウイ・ファンなのかは知らないが、声質が少しボウイに似ているので、その歌はなかなか良い。インタビューでも、意外なほどボウイの真意を理解していたのではないかと思われる発言をしている。

ラザルス主演マイケル・C・ホールが歌うヒーローズ

 ボウイが死んだニュースの映像が流れた場面では、少し以前に収録したと思われるボウイが自分の人生についてインタビューに答える肉声が使われている。
「ものすごく充実した人生だった。ドラッグ漬けだった70年代を除けば、無駄な時間は一切なくてラッキーだったと思っているよ」と答えたあと、「死後は、人々にどのように記憶されたいですか?」という質問に一言「髪型がカッコよかったと思われたい!」と言い切って爆笑する。
 これこそが、デヴィッド・ボウイだな!死んでもなおカッコがいい!

by 寅松