The Good Fight/ザ・グッド・ファイト シーズン3

トランプ弾劾ドラマの急先鋒に成長した、ロー・ファームものの最左翼が大暴走!

 

The Good Fight Season3 
2019年 アメリカ カラーHD  49-53分 全10話 CBS All Access Amazon Primeで視聴可能
クリエイター:ロバート・キング、ミッシェル・キング 監督:ブルック・ケネディー ほか 製作総指揮:リドリー・スコット、キング夫妻 ほか
出演:クリスティーヌ・バランスキ、ローズ・レズリー、クッシュ・ジャンボ、デルロイ・リンドー、マイケル・シーン、オードラ・マクドナルド、サラ・スティール、ニャンビ・ニャンビ、マイケル・ボートマンほか

 もともと「グッド・ワイフ」は、CBSの地上波で2009年に始まり、2016年シーズン7まで続いた大ヒットドラマである。ERで有名になった、ジュリアナ・マルグリースを主演に据えて、州検事からスキャンダルにまみれながら州知事にまで上り詰める夫と、離婚せずに別居しながら、自分も弁護士に復帰する強い女性アリシア・フロリックを描いた作品だが、メロドラマとロー・ファーム(弁護士事務所)ドラマを合体させた点が目新しかった。しかし、もう一つの特徴は、ドラマがシカゴという特殊な地域の風土をドラマに取り込んだ点だと思う。
 シカゴはとても荒っぽい街だ。ギャングが牛耳った歴史的背景や、アイルランド系や黒人などの派閥と文化がつねに隣接し、実際に犯罪も多い。法律や政治の世界もやたらに好戦的で、つねに対決姿勢なのが、この街の特徴なのだ。
 「グッド・ファイト」は、そのスピンアウトという位置ずけで、アリシアの事務所の代表パートナーだったダイアン(クリスティーヌ・バランスキ)と巨額投資詐欺事件で刑務所に入る証券業界の大物の娘ながら、レズビアンで、家族と決別して弁護士業界に残るマイア(ローズ・レズリー)、グッドワイフの後半に登場するルッカ(クッシュ・ジャンボ)、さらにはイーライ・ゴールドの娘としてグッド・ワイフで少しだけ登場した、メリッサ(サラ・スティール)やダイアンの夫カート(ゲイリー・コール)、保守派のアソシエイト、ジュリアン・ケイン(マイケル・ボートマン)などのキャラクターをグッド・ワイフから引き継ぎ、別ドラマとしてスタートしている。
 グッド・ワイフとグッド・ファイトは似て非なるドラマである。
 グッド・ワイフの基本はメロドラマで、その形を借りて法律、政治の世界の行われる不正や横暴の真の姿を暴いて見せた。しかし、それはあくまで民主党的世界観、どこまでいっても法律や民主主義の枠組みは不可侵なものとして存在していて、そのなかでいかに立ち回るを人々が模索する物語である。
 グッド・ファイトは、ドナルドトランプが当選し、民主党的世界観、つまりすくなくとも法律や表面上とはいえ民主主義的正義は当然のこととして機能していた従来の世界が崩壊したところからスタートする。その象徴としてシーズン1から登場するのが、証券業界の超大物でセレブの娘として育ったにもかかわらず、父親の築いた投資ファンドがただのネズミ講だったことがわかり(もちろん2008年に発覚した、元NASDAQ会長であったバーナード・マドフによる米史上最大の詐欺事件を下敷きにしている)、自分をめぐる世界が崩壊してしまう、主人公マイアなのだ。
 そして、その秩序崩壊した世界で、どのようにシカゴ流で戦い抜くか!それこそがタイトル通り<Good Fight>のテーマである。
 シーズンは1から2と進むにしたがって、徐々にトランプ世界に対するストレート批判が加速してゆくが、これも単に今のアメリカの現状を反映しているにすぎない。CBSもその辺は十分承知で放映しているのだ。そもそもローファームものはドラマのなかでも理解するのに知性を必要とするドラマである。それを加味すれば、CBSのケーブルに加入して、わざわざこのドラマを見ようとする人間は100%反トランプと考えても間違いはないだろう。(メロドラマだと思って見だしたけれど、「なにこれ!政治の話ばっかりで幻滅ー!」と思った日本の視聴者には、知能程度にみあった韓流ドラマあたりがわかりやすくておすすめである。)
 シーズン3の出だしは、加速度的にトランプ判が噴出するが、それだけのドラマではない。ロイ・コーン(赤狩りに協力したアメリカ史上最悪の悪徳弁護士で、若きトランプを指南した。もともと民主党で自らもゲイでありながら最後まで差別主義と金と不正に生きた複雑な人物で、2003年の名作ドラマ「エンジェルス・イン・アメリカ」には、その人物像がつぶさに描かれている)の弟子だったというロイ・コーンそっくりな悪徳弁護士、ロナルド・ブラムがキャラとして新登場し、マイアと共同作業をすることになり、事務所全体を混乱に陥れる。
 この、ちょっと茶目っ気のある悪徳弁護士を演じるのが、Amazonオリジナルの「グッド・オーメンズ」でゲイ気味の天使を演じていたマイケル・シーンである。髪の毛も金髪にしていた天使とは180度転換で、見た目もヒゲもじゃのヒゲゴジラ調(古い!)。グッド・オーメンズをみた人には是非一度見てもらいたい。
 黒人主体のローファアーム、レディック&ボーズマンで起こる、黒人と白人の半目や、MeeTooムーブメントの進行の中、リベラルな側でも噴出する過去の疑惑、さらにダイアンとリズがひょんなことから参加した、反トランプのためのレジタンス運動も暴走しはじめる・・。キング夫妻の物事を単純化しない知的なパースペクティブは健在である。
 政治から距離を置いているとみられていたアイドル(テイラー・スイフトがモデル)が、左右からの批判で堪らず政治的立場を表明するエピソードや、秘密で持ち込まれた離婚話に「まさかカニエとキム(カーダシアン)か!」と事務所が大盛り上がりになったり、その真相が(訛りのすごい)トランプの妻からの離婚したいという申し出であったりと、事実そのものではないが、アメリカのありがちなスキャンダルはいち早く盛り込まれているし、ダウントン・アビーのジャズ・シンガー役でブレイクしたゲイリー・カー<Gary Carr>が、役作りの研修のためという名目で自分役で登場して、ルッカに気を持たせた挙句・・・という話も愛嬌。(この人はサイエントロジーじゃないよね?)
 このドラマでは、数少ない共和党支持者で、いやいやながらトランプの息子たちとも付き合っているために、常に肩身の狭い状況に追い込まれているカート(ゲイリー・コール)のささやかな抵抗ぶりも微笑ましい。
 キング夫妻は、最近どーも「歌で説明」に凝ってしまったようで、やたらにそれが頻発される。Youtubeのキャンペーンなどでも使われる、物事を単純化して伝える手法で、そのことへ自体への批判が含まれてはいるのだが、いかんせんちょっと多すぎる気がする。

 トランプは、もはや自らが人種差別主義者であることを隠そうともしていないし、人種差別を助長する発言を積極的に展開している。アメリカ国内では、明らかにその影響を受けた差別主義者が各地でテロを起こし、銃による乱射は立て続けに起こっているのだ。
 これはドラマではなく現実の世界の話である。
 そのような世界で一体どんなフィクションが成り立つのだろう?
 グッド・ファイトの政治主張はこれからも過激にならざるをを得ないし、いまのアメリカには、是非とも必要なドラマである。
 
by 寅松

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