不良探偵ジャック・アイリッシュ 2人の父への鎮魂歌

もはや不良の感じは全くしない!女には弱いが、お年寄りにはめっぽう優しい。探偵としてどーなんだ!

 

Jack Irish: Black Tide  
2012年 オーストラリア カラーHD  93分 ABC1(オーストラリア) Aamazon Primeで視聴可能
監督:ジェフリー・ウォーカー 脚本:マット・キャメロン 原作:ピーター・テンプル
出演:ガイ・ピアーズ、マルタ・デュッセルドープ、アーロン・ペターゼン、ロイ・ビリング、ダミアン・リチャードソン、ショーン・ヤコブソン、ドン・ハニ、ダイアナ・グレン ほか

 第1作ではまだ妻を亡くした心の傷が癒えないのかとも思ったが、今回は前作からさらに時間が経って多少立ち直りを見せている。ヤバい仕事なのかもしれないが、一応弁護士の半端仕事にも復帰したようだ。しかし、この男は探偵としては前作に輪をかけてダメダメである。ドラマも正直ダメダメだ。
 出だしは期待させる。バンコクの空港で、捜査官らしき男に締めげられる密輸犯。荒地の井戸のタンクに目隠しのまま落とされて、始末される男。ジャックのオフィスには、「おかげでムショに行かないで済んだよ!」とえらく感激してホルマリン漬けにした被害者の肝臓をプレゼントとして持って来るイカれた凶悪犯。
 全く繋がりがなさそうなシークエンス、徐々に一つの大きな犯罪の姿を見せる、今や一流ドラマでは常識的に使われる手法をいよいよ取り入れたのか!と期待したのだが、全くの間違いだった。
 このあとは、一直線にジャックの主観でドラマが展開する。ちょうど人の葬式に出て、自分が子供に死んだ父親の葬式を思い出していたジャック。そのもとに、なんと父親とチームメイトだった、もとフッティー(オージー・フットボール)選手のデス・コナーズがやってくる。バカ息子のゲリーがデスの老後資金を全部まあき上げたうえに、父親の家も勝手に抵当に入れて姿を消したらしい。ともかく、息子のゲリーを探してみると、依頼を引き受けるジャック。しかし、ゲリーが関わっていたのは、警察組織や巨大企業が関わる大掛かりな薬物取引だった!
 犯罪はリアリティを持たせるために複雑になっている。そのせいで、ゲリーの他にも捜査をしていたらしいコンサルタント、陰謀を暴こうとしていたらしいネッット・ジャーナリストと色々キーマンが登場するのだが、その誰もがすでに行方不明か死んでいて、一向に犯罪そのものの全貌が見えない。全てが、話として説明されるだけだ。どんでん返しを気にしたとしても、それらの人物が、どんな意図で行動をしたかがわかる描写がないと話にならない。
 ところが、このドラマで描かれるのは、全く余計なことばかり。
 ジャックの彼女だったリンダは新聞記者を止めて、シドニーでTVのリポーターとして華々しく活躍。ついでに、ニュースショウの有名アンカーマンと寝ているらしい。それを知って、一人落ち込むジャック。と、おもったらすぐに、捜査の過程で知り合った戦場カメラマンの熟女と熱い一夜を・・・・。
 あとは、都合よく登場したネット調査担当のオタク女子をからかったり、家具職人の師匠のペタンクの試合を見に行ったり、相変わらずのパブ老人たちが、店に飾ってある写真を買い上げる話が出ていると聞いて大騒ぎをしたり、金貸しの競馬マニアには汚い手を使うライバルが現れて憤慨したり。
 これは、監督/脚本家がとてもバカなのか、もしくはミステリー/サスペンスには興味がないのか?どっちかだろう。
 いろいろやばそうな事が起こって、ジェック自身は緊迫してゆくのだが、最後は父親の記憶を頼りにゲリーの居場所を推測するって・・・、そんなことかよ!という展開に。
 飛行機で行くような場所で、大混乱になるのだが、結局最後は用心棒の友達、キャムに「ここまで来てくれ」と電話でお願いする始末である。
 最後にとってつけたように、父親の墓参りをするのだが、別にそれで感動するような要素もない。だいたい、ジャックは父親ビルによく似ているらしいのだが、みんなの言葉によれば「とにかく、ビルはよく喧嘩をした」という暴れん坊であった。ジャックは、全然腕っ節が強くないのだ。(笑)
 探偵ドラマとしては、ほぼ見る価値がない。
 しかし、見終わっても、全然いやな感じはしないということだけは断言しておこう。とにかく、主人公のジャックは、お年寄りにはめっぽう優しくて、いいやつだ。

by 寅松

日本語版

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