THE CROSSING/未来からの漂流者

低予算で全編にカナダ感満載だが、脚本は秀逸で打ち切りは超残念!

 

The Crossing  
2018年 アメリカ カラーHD  42分 全11話 ABC スーパー!ドラマTVで放映
クリエイター:ダン・ドウォーキン、ジェイ・ビーティー
監督:ロブ・ボウマンほか
出演:スティーヴ・ザーン、ナタリー・マルティネス、サンドリーヌ・ホルト、トミー・バストウ、リック・ゴメス、ジェイ・カーンズ、ケリー・ミザル ほか

 オレゴン州の鄙びた海岸地帯。地元の保安官事務所のシェリフ、エリスは海岸に屍体が流れ着いたと知らせを受けて助手のロザリオとともに浜辺にやってくる。一人だと思っていた遺体を調べていると、横には何体もの溺死体が。慌てて、海から引き上げると、一人の少女はまだ息をしている。
 慌てて「沿岸警備隊とレスキューを手配しろ」と叫ぶが、助手のロザリオは「見てみろ」沖をと指差す。その海には、無数の人間が浮いていた・・。
 夜になるまで捜索は続くが、溺れた人々はだれ一人救命胴衣をつけていないばかりか、付近には船も航空機もいた形跡がない。400人以上が打ち上げられ、なんとか生き残ったのは47人だけだった。
 助かった少女にエリスが尋ねると、なんと戦争から逃げてきたとの答え。「戦争なんて起こってないぞ?」というエリスに少女は答える「これから起こるの」

 視聴率を取りにくいSF作品を地上波TV局が製作するのは、近年とてもめずらしい。SFの話題作は、おしなべてNetflixもしくはAmazonでしか作られていないのが現状だ。大手地上波のABCが久々にかなり本格的なSFを手がけるというのは喜ばしいニュースには違いない。なんといっても。ABCには<LOST>という輝かしい実績もあることだし・・。
 物語の始まりは、<LOST>タイプというべきだろう。鄙びた海岸で400人もの人が浮かんでいたり、エキストラが多い救助シーンはなかなか大変そうだ。予算の配分も<LOST>にならって、オープニングにそのほとんどをつぎ込んでいると思われる!
 最初は派手だが、生き残りの遭難者の数は47人になって、国土安全保障省が彼らを閉じ込めたという名目で、その後の多くのシーンはカナダ・バンクーバー郊外のロッジ村を借りて撮影されている。これは安上がりだ。
 オレゴン州に設定されている架空の町、ポート・ケイナンもよほど田舎の設定なのだろう。祭りのシーンも、何もないカナダの海岸にささやかなセットを作ったのが見え見えだ。その他の多くのシーンが、単に森の中で撮られていたりする。
 最初に登場した遭難者たちは、180年後の未来の世界で、遺伝子操作によって 誕生した優越人類「エイペックス」(「頂点に立つもの」と字幕にルビが振られる)の迫害を逃れてきた普通の人間たちという設定なので、何度か未来の世界が描かれるが、その部分は、予算が残っていない感じがモロに出ている。
 しかし、ドラマとして一番重要な脚本に関して言えば、結構良くできている。
 ものすごい傑作とまでは言わないが、それぞれのキャラクターも描けているし、色々な謎が次々噴出するが、ちゃんとつじつまが合うように(少なくともシーズン1の間は)考え抜かれているようだ。
 47人の生存者をめぐるドラマは、彼らの存在を隠して、どうやらその存在を消し去ろうとしているらしい国土安全保障省の副次官リンダウワー(ジェイ・カーンズ)と、途中でその命令のおかしさに気づく部下のレン(サンドリーヌ・ホルト)や、捜査官のロイ(グラント・ハーベイ)。最初から、遭難者が隠されたことに納得していない保安官のエリスとロザリオ。遭難者の中に一人だけ混じって現代に現れたエイペックスのリース、彼女が育てる幼い人間の娘レア(ベイリー・スコジ)。対エイペックス抵抗軍のメンバーだったケイレブ(マーキス・ハリス)とその妻レベッカ(シモーネ・ケッセル)などを巡って繰り広げられる。ダメなドラマは、最初だけでダメになってゆくが、このドラマは11回のラストに向かって面白さが増してゆくのだから頼もしい。
 未来から難を逃れてきた避難者たちの本当の敵は、追ってきたエイペックスでも過去の時代のアメリカ人たちでもなく、実は歴史を変えるという使命の元に、先遣隊として過去に移住してきた未来人たちだったという皮肉な物語の骨格も面白い。
 俳優陣は地味だが、物語にはプラスに働いているだろう。(有名俳優がいないので、話の予測がつかない)主役のエリスを演じるのは、コメディアンで、俳優としては「リアリティ・バイツ」を皮切りに、「ダラス・バイヤーズクラブ」「猿の惑星: 聖戦記」「はじまりへの旅」「マッド・ドッグス(アメリカ・リメイク版)」などで知られるスティーブ・ザーン。国からの圧力があっても、普通のアメリカ人として、当たり前の人道的な対応を取ろうとする保安官の役柄は、シリアスな顔が染み付いてしまっている俳優より、ちょっと間抜けに見えるくらいのザーンが似合っている。
 エイペックスの役のナタリー・マルティネスは、美人さんなのにガタイがしっかりしていて、超人類にはぴったりだ。
 人がいいが、よく喋るだけで役に立たなそうな保安官助手は、どこかで似た感じのやつがいたと思ったら、スパイ・コメディ「CHUCK/チャック」の主人公のダメ相棒モーガンだった。実はこのロザリオを演じているリック・ゴメスは、「チャック」でモーガンを演じたジョシュア・ゴメスの実の兄。「バンド・オブ・ブラザース」や「恋するブライアン」にも出演している。
 他にもハンナ役のケイリー・ミザル、ドクター・ソフィー役のジョージナ・ヘイグなど2人の美人さん、ロイ役のグラント・ハーヴェイくん、マーシャル役のトミー・バストゥくんという2人のイケメンも出ているが印象は強くない。
 むしろ印象が残るのは、エリスの息子のクリストファー・マイケル・クーパーくんと、レア役のベイリー・スコジちゃんで、とにかくこの子供達が可愛い。
 ずっと、ものすごく嫌なやつだったリンダウワーが、最後に意外な複雑さを見せるところを、「ザ・シールド 〜ルール無用の警察バッジ〜」で、やはり複雑な性格できもい自信家のダッチを演じたジェイ・カーンズが好演している。
 演出はオーソドックスで安心できるが、それが現代の視聴者にあまりアピールしなかったのか、視聴率は右肩下がりで、残念ながらシーズン2はABCからキャンセルされてしまった。
 ドラマは、明らかに次のシーズンに続くという作りになっているに!どーしてくれるんだ!先まで考えていないのに、ロングヒットしてしまった「LOST」や 「フリンジ」みたいな無残な最終シーズンは見たくはないが、せめてあと2シーズンくらいは見たいドラマだぞ!

by 寅松

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