パーティで女の子に話しかけるには

はじめてうんこをする異星人のエル・ファニングが可愛すぎる!パンク+カルト宗教+異星人の・・SF青春ドラマ!

How to Talk to Girls at Parties
2017年 イギリス/アメリカ カラー 102分 GAGA/A24/Studio Canal ムービープラスで放映
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル 原作:ニール・ゲイマン
出演:エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン、ルース・ウィルソン、マット・ルーカス、トム・ブルック

 原題もそうだから、このほのぼのとした青春コメディを思わせるタイトルは、原作者ニール・ゲイマンの狙いなのだろう。確かに青春ものではあるが、実はSFという意外な作品だ!
 ゲイマンといえば、ダーク・ファンタジー・グラフィックノベル「サンドマン」の原作者としてもともと有名だが、近年「スターダスト」「アメリカン・ゴッズ」「グッド・オーメンズ」など作品が次々映像化され、大いに注目されている作家である。独自に宗教・神話・歴史を組み合わせた壮大なファンタジーが多いが、この原作となった小説は自伝的な短編小説である。(短編集『壊れやすいもの』収録・角川書店)なので、話自体は怪しいパーティーで出会った異星人らしき女の子の思い出、というこじんまりしたもの。そのあとのドタバタ劇とパンクの理想と異星人コメニュティーの変革を掛け合わせたテーマ設定は監督である、ジョン・キャメロン・ミッチェルが付け足したにちがいない。
 設定は1977年。主人公のパンク小僧、エン(アレックス・シャープ)は、仲間のヴィク、ジョンとパンクのファンジン(同人誌)を作っている。ヴィヴィアン・ウェストウッドと働いていたことが自慢の地元(南ロンドン)のパンク・コミュニティーのボス、ボディシーア(ニコール・キッドマン)が主催するギグになんとか潜り込んだ3人だが、打ち上げパーティーで女の子をものにするつもりが、部外者の彼らはパーティーの場所がわからない。諦めて帰ろうとしたとき、エンが空き家になっている屋敷から奇妙な音楽が漏れ聞こえているのに気づく!パーティーにちがいない!
 ヴィクがおそろおそるドアを叩くと、中から出てきたのはラテックスの奇妙な衣装に身を包んだ女の子ステラ。はじめは断られるが、ヴィクはステラをおだてまくってなんと屋敷に入り込む。しかし、そこで行われていたのはパンクのパーティーでは・・・なかった。未来派のワークショップか前衛パントマイムか、もしくはカルト宗教の集会のような奇妙な雰囲気。3人はそれぞれ女の子に話しかけて、奇妙な体験をするが、ステラとセックスしようとしたヴィクは、興奮の途中分裂した相手を見てはじめて彼女が普通の人間でないことに気づく。驚いたヴィクは慌てて、仲間を外に連れ出すが、エンと知り合った異星人の女の子、ザン(エル・ファニング)が一緒についてきてしまうのだ。
 異星人たちは、どうやら修学旅行のような「ツアー」で地球外からロンドンの人間社会に研修として入り込んでいるらしい。体験が物足りないと、自分のコロニー(集団)で反抗的な態度を取っていたザンは、48時間の猶予をもらって飛び出してきたのだ。ザンはエンに「パンクに連れて行って」と頼む。店は全部しまっているよ!と答えるエンだが、ザンには理解できないようだ。とりあえずエンは、彼女を自分の家に連れて帰るのだが・・・。

 映画自体は、世界的に散々な評判だったようだ。テーマが絞れていないという意見は当然出るだろうし、パンクの理想と異星人のコミュニティー変革という、中途ハンパな政治的テーマが未消化だという批判ももっともだ。しかし、この映画がまったく魅力がないかというと、そうとも言い難い。ヘンテコなチャーミングさは十分あるのである。

 1977年という年は、パンク元年だ。この時代にイギリスで過ごした少年ならパンク小僧になるのは当然だろう。1960年生まれのゲイマンは17歳になったばかりだし、最初の著作がデュラン・デュランの伝記だったくらいだから当然当時はパンク少年だったにちがいない。さらに、異星人がイっちゃってる人たちなのは、家族全員がカルト宗教「サイエントロジー」信者という特殊な環境で育ったゲイマンならではの発想である。
 さらに輪をかけてパンクに思い入れがあったらしいのが、ミュージカル/映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」で知られる、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督。ミッチェルは1977年には14歳。テキサス生まれだが、この時期には軍人の父と共にスコットランドで過ごしていて、母親はグラスゴー出身のイギリス人だ。「英国を舞台にパンク音楽をテーマにした映画の製作は長年の夢だった」というだけあって、パンク小僧の日常は、なかなか生き生き描かれている。ただし、イギリス特有のくすんだ感じはいまいちなくて、どうもちょとばかりキラキラになってしまうのは、致し方ないのか??
 パンクのライブシーンには思い入れがあるようで、最初のローカルバンド、ディスコーズのギグも、ザンがボディシーアに誤解されてステージに引っ張り出されるギグシーンもけっこう長い。が、音楽的にもシーンとしても、十分な魅力には欠けている。全体的にファッション的な雰囲気だ。
 しかし、ミッチェルは主演のエル・ファニング(ダコタ・ファニングの実の妹)の可愛さを引き出すことには成功している。キスをしようとしてゲロを吐いたり。トイレに座って、生まれてはじめてパンケーキを食べたので、それを排泄するのに時間がかかってる!と宣言してみたり。つるつるの脇の下の匂いをエンにかがあせたり。裸もエッチシーンもないのだが、寸止めのフェッチ表現が実にうまい。エンの父親の古着(?)だろうか、男物のコートを着こなしているのもクールだ。若い映画ファンには、これで十分かも知れない。
 大女優ニコール・キッドマン(ボディシーア)と「ルーサー」「アフェアー」のルース・ウィルソン(オレンジ色のコロニーのPT役)は、セクシー対決風のシーンはあるものの、いかにもゲストという感じでリラックス。
 エンを演じたアレックス・シャープは、二枚目というよりいかにもイギリス人らしい顔で好感が持てる。演技的に見せ場があるわけでもないが、二人の出会いから15年後を描く短いシーンでは、実に感情を抑えた演技でホロリとさせられた。

 現在大手3社の配信サービスでは視聴できないようだ。 Amazonビデオ、FODフジテレビ・オンデマンドなどでは購入可能。

by 寅松