ジャック・キング作戦

「M」や「スマイリー」のモデルが!実際に従事したスパイ作戦の全貌が公開された

L’Affaire Jack-King
2015年フランス カラー 52分 プラネテプリュス/Netflixで配信
監督:ベンジャミン・コーエン、ニコラ・コットー

 2014年に突如公開された英国情報部MI5の機密文書から、第二次大戦中のイギリス国内の諜報活動/情報戦の実態を紹介&解説してくれるドキュメンタリー。

 大戦前、イギリスにもBFU(イギリス・ファシスト連盟)というナチ的組織があったのは傑作テレビシリーズ「刑事フォイル」にも出てきていたが、ここでは実際にナチスシンパだった元BFUのメンバーたちを利用して、偽情報を流したり、軍事機密流出を防ぎノルマンディ上陸作戦を成功に導いたMI5の活動ぶりが紹介される。「ジャック・キング」はMI5が作り上げた架空の人物で、ゲシュタポのイギリス支部を装っていた。1940年、ナチスドイツのイギリス上陸が予想され、ロンドンが空爆される戦況下、「彼=ジャック・キング」は手紙などを使って軍需工場などで働くナチスシンパ(スパイ)だちに近づいていく……。
 作戦の最大の功績はノルマンディ作戦の上陸地点をナチスに知られないようにする隠蔽作戦だったが、このジャック・キング作戦は大戦終了まで滞りなく遂行され、そのまま秘密裏にファイルされたという。つまり、MI5に利用されたナチ・シンパたちは、その後逮捕されることもなく、自分はナチスのために仕事をしたと思い込んだまま死んでいったそうだ。映画なら確実に敵スパイは殺されると思うけど、実際のMI5は意外に心が広かったようだ。

 映画といえば、この作戦を指揮したMI5の「スパイマスター」マックスウェル・ナイトは、かの有名な「007」の上司「M」のモデルになった男。長身でスマートな本物の「M」は、バーナード・リー(初代M)よりはレイフ・ファインズ(現M)のほうが似ているかもしれない(パイプも吸ってます)。またスマイリー(ジョン・ル・カレのスパイ小説の主人公)のモデルとされるジョン・ビンガムが実質的にジャック・キング作戦を進めた男として紹介され、娘さんや伝記「スマイリーだった男」の著者もインタビューに出てくる。あと、3番目の「ジャック・キング」役だったのがエリック・ロバーツ(!)という人物だったというのも、関係ないけどちょっと面白い。

 スパイ活動を思わせる白黒映像は、古い映画を利用しているのだけど、なぜかリチャード・フライシャーの50年代のノワールもの『札束無情』『その女を殺せ』などが使われていた。ときおり、バンドデシネの一コマみたいなイラストが出てくるのは、フランス製作のドキュメンタリーらしさを出したかったのかも。

 そうそう、オーストリアからイギリスに帰化したハンスとかいう名のナチ党員のスパイがいるんだが、字幕が「オーストラリア」になっていた。やっちゃいけない誤植だよなあ。スパイなら、まさに致命傷だ。

by 無用ノ介