オンランシネマ

この世に私の居場所なんてない

オタク・カップルが悪人たちに! ヌンチャクと手裏剣でお仕置きだー!

I Don’t Feel at Home in This World Anymore.
2017年 アメリカ カラー スコープ 96分 Netflix / Netflixで配信
監督・脚本:メイコン・ブレア
出演:メラニー・リンスキー、イライジャ・ウッド、デヴィッド・ヨウ、ジェーン・レヴィ ほか

 題名が、よくない。まるで、うじうじした自殺願望のいじけっ子の話かと思いきや……全然違うじゃないか。
 看護師兼ベビーシッターをしながらひとりで暮らしているルース(メラニー・リンスキー)は、仕事中に空き巣に入られてラップトップPCと祖母の形見の銀食器を奪われる。警察はやる気がない。仕方ないので自分で、侵入者の足跡を石膏で型を取る。PCにGPSで場所を知らせる追跡ソフトを入れていたので、所在が分かる。近所のチンピラたちの家だ。いつも家の前に犬のフンを残していく格闘技マニアでヌンチャクや手裏剣も使えるトニー(イライジャ・ウッド)に助っ人を頼んで乗り込む。無事、PCを取り返し、今度はリサイクルショップへ銀食器を取り返しに行くと、そこに来ていた金髪男の靴が石膏の型と一緒ではないか。男の車のナンバーから自宅を調べると、なんとギャングの親分の豪邸だった……。
 
 たしかに、事件が起きる前はウジウジしていたのかもしれないが、空き巣に入られ、やる気のない刑事と話しているうちに正義感が燃え上がる。「人がクソったれ(アスホール)にならないように」と立ち上がった小太り、というか体格のいいファンタジー小説オタクのルースと、ひ弱そうなのにハードボイルドなカンフー・ファイターを気取っているイライジャ・ウッドが、チンピラやコソ泥集団やギャングと戦い、最後は血みどろに……。まあ、あまりカッコよくもないし、オフビートを狙った展開がいまいちはじけていないので、カタルシスもない。オタクであることの利点も特に活かされない。そもそもなぜ、ルースの愛車がマットブラック塗装のポンティアック・ファイアーバードなのか……さっぱりわからん。
 脚本・監督のメイコン・ブレアは、『グリーンルーム』(15)『ゴールド/金塊の行方』(15)などで、そこそこ活躍している脇役俳優。もうひとひねり、ふたひねりほしかったが、家族に言えないような下品なことを最後の言葉に息を引き取る老患者とか、ボートのエンジンがかからないのでオールで漕いで逃げると、敵は別のボートのエンジン全開で追って来るとか(ボート選びは慎重に)、ちょっと面白い部分もある。教会のミサに行くと、エコー&バニーメンの「Bring on The Dancing Horses」がかかるのだが、映画として流れているのか、教会で賛美歌になっているのかどちらにもとれる。メイコン・ブレアは、ここに何かを託したのかもしれない。きっと、そうだ。ま、そういうことにしておこう。

by 無用ノ介