ビースト・オブ・ノー・ネーション

アフリカンジャングルの『シティ・オブ・ゴッド』×『ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場』

Beasts of No Nation
2015年 アメリカ カラー スコープ 137分 Bleecker Street / Netflix Netflixで配信
監督・脚本・撮影:キャリー・ジョージ・フクナガ 
出演・イドリス・エルバ、 エイブラハム・アッター、アマ・K・アベブルゼ 、コビナ・アミッサ=サム

 東京国際映画祭に出品された翌年、Netflixで世界配信され、限定公開されたアメリカではアカデミー賞有力とも噂された。結局は、ゴールデン・グローブ賞の助演男優賞部門にイドリス・エルバがノミネートされただけだったが、プロデューサーも兼ねて入れ込んでいたエルバの出世作になったのは確か。

 内戦が続くアフリカの架空の国。10歳ぐらいの少年アグー(エイブラハム・アタ)が住む町に政府軍が侵攻し、父親はスパイ容疑で殺される。ジャングルへ逃げたアグーは、ゲリラ部隊に捕まり兵士にとして訓練を受ける。カリスマ的な指揮官(イドリス・エルバ)少年たちを含む混成部隊を率いて進撃し、いよいよ首都攻略間近に迫る。しかし、勝利を目前にした最高司令官は戦争犯罪で裁かれるのを恐れて、指揮官を解任する……。

 大きな声で鼓舞し、ドラッグ(茶色い粉を傷口に塗り込む)で高揚状態になっての戦闘では緑のジャングルが真っ赤に変わる! キューブリックの『フルメタル・ジャケット』とイーストウッドの『ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場』をアフリカの少年たちが見事に演じてしまうのが見ていて恐ろしい。そして、暴れっぷりは『シティ・オブ・ゴッド』にひけをとらない。
 イドリス・エルバ演じる指揮官のアフリカ訛り(?)英語からは、まさか彼がロンドン生まれのイギリス人だとは想像もできないだろう。カリスマを失い、部下に去られた彼が見せる表情は『刑事ジョン・ルーサー』で何度も見た「あの目」だ。
 少年がドラッグでおかしくなって、見知らぬ女を母親と間違えてすがりつき、違うと気づいて仲間が犯している最中の女の頭を撃ち抜く場面はすさまじい。タバコは吸うわ、売春屋で撃ちまくるわ、指揮官に「稚児」扱いされるわ、こんなことを少年に演じさせていいんだろうか……。
 国連軍に投降し、最後は海辺の施設で、表向き楽しそうに暮らす少年の未来を暗示させて映画は終わる。政府軍も反乱軍もゲリラも関係ない、「ビースト・オブ・ノー・ネーション=よりどころのないけだもの」だけが残ったのだ。主人公の行く末も気になるが、演じたガーナ人の少年エイブラハム・アッターくんのその後が気になるが……この映画でヴェネチア国際映画祭 マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞、どうやらハリウッドに認められて『スパイダーマン:ホームカミング』(17)にも出演しているようだ。アメリカでドラッグに興じて「ビースト」に戻らないことを切に祈る。

 カリフォルニア・オークランド出身の日系人監督キャリー・ジョージ・フクナガは南米の少年を描いた『闇の列車、光の旅』(09)で注目され、『ジェーン・エア』(11)に抜擢され、『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』(14)でドラマファンをうならせ、NETFLXドラマ『マニアック』(18)を作った後、007シリーズ(第25作)に取り掛かっているという(2019年現在)。
 

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