サバイバー:宿命の大統領 シーズン1

意外なほど面白い!と言ったら失礼か?米、地上波ドラマの最後の逆襲のはずが・・

Designated Survivor Season 1
2016年 アメリカ カラーHD 43分 全21話 ABC/Netflix スーパー!ドラマTVで放映 
クリエイター:デヴィッド・グッゲンハイム 監督:ポール・マクギガン、クリス・グイスマー、フレッド・トーイほか
出演:キーファー・サザーランド、ナターシャ・マケルホーン、エイダン・カント、イタリア・リッチ、カル・ペン、マギー・Q、マリク・ヨバ ほか

 とにかく出だしが派手である。主人公であるトム・カークマン(キーファー・サザーランド)は学者だが、たまたま住宅政策を提案したら大統領に気に入られて住宅都市開発長官に任命されてしまったという素人政治家。しかも融通が利かない性格が災いしてか、今や大統領から煙たがられ事実上の更迭も決まっていた程度の閣僚だ。アメリカでは一般教書演説の間、すべての閣僚は大統領の演説を目撃するために国会議事堂に集まるのだが、一人だけ災害などが起こった時のために「指定生存者」<Designated Survivor>として、大統領を代行する人物を指定/隔離する制度があるらしい。ただ、現実問題として大統領以下の閣僚が全員死ぬなどという事態は起こり得ないので、この制度は形式的なものなのだろう。そして、その形式的な制度で任命されるなどというのは嫌がらせみたいなものなので、本人もふてくされているのは当然だ。
 トム・カークマンもこれが終わったら、「ワシントンともおさらばだな」という気分で、パーカーを着てシェルターの中でくつろいでいる。
 ところがそれは起こってしまう!
 アメリカの国会議事堂が大爆発!なんと、大統領以下全閣僚とほとんどすべての国会議員が死んでしまうのだ。緊急にホワイトハウスに向かう車の中で「生存者はいません。あなたが大統領になるんです」と警護官から言われたカークマンは呆然とする。なにしろパーカーを着たままだ。そのままホワイトハウスで、駆け付けた最高裁判事に言われるまま、宣誓をして大統領の誕生。しかし、大統領になったら、今度はすぐさま色々な問題勃発!好戦的な軍のトップは、攻撃態勢をとりたがるし、こちらの弱みに付け込んでイランは艦隊を移動させる。その上息子は友達の家じゃなくてクラブで遊んでいて、警護官が捜索する羽目に。
 カークマンは、重圧のあまりトイレで吐いてしまうくらいだ。この情けのない感じが、リアルで好感が持てる。
 そもそも、ケーブル系や動画配信系の質の高いミニシリーズが全盛の昨今。大手地上波ネットワークが製作した全21回もあるスケールの大きいパニックサスペンスと言われたら、あんまり期待できないと思うのは仕方ないこと。しかも主演が「24 -Twenty Four」のキーファー・サザーランドなんて言われたら、「こっりゃ、ダメだ」と思われても仕方ないだろう。キーファー・サザーランド、自分で戦う大統領かあ?って誰でも思うでしょ?しかし、この予想は完全に裏切られる。
 キーファー・サザーランドの残念さは本人だけの責任ではない。何と言っても偉大すぎる怪優である父ドナルド・サザーランドと比られずにはいられないという不幸から出発している。役者としてのキーファーにつきまというのは、「小物感」というレッテルだ。父が大物すぎるので、これは仕方ない。怪物と比べられなければ、それほどでもなかったかもしれないが、この男は若い頃から常に比べられ続けてきた。本人は、カントリーを愛する保守的なアメリカ人で、特に悪いところはないのだが、いかんせん父親に比べてフツーすぎるのだ。
 それでも、ようやく「24 -Twenty Four」の暴走する捜査官としてスターの仲間入りをした。しかし、今回の「サバイバー:宿命の大統領」ではこの「小物感」が存分に生かされた脚本になっている。最初は「おいおい、こんなやつが大統領になるの?困るよ〜」と思われるフツーおっさんが、素人ならではの実直さで国政に当たるというシチュエーションは、往年のハリウッド映画のようでかえって新鮮だ。政治劇の部分では特に、インド系のスピーチライターで報道官に任命されるセス・ライトを演じるカル・ペンの演技がリアリティーを支えている。なにせ、ペンは実生活で一時俳優業を休職して、オバマ政権広報部でアソシエイト・ディレクターを務めていた人物なのだから非の打ち所はない。
 ニコラス・ケイジの「ゲットバック」やデンゼル・ワシントンの「デンジャラス・ラン」(共に2012)などを手がけた脚本家、デヴィッド・グッゲンハイムは、この政治劇とスパイ物的な国家陰謀とサスペンス、各登場人物が抱える個人的なストーリーを、かなりうまくまとめている。これはなかなかできる仕事ではない。
 もちろん、話が壮大すぎるのでサスペンス部分では穴もある。事件の捜査に当たるのは、爆発で亡くなった議員と不倫しており、個人的にも真相究明に執念があるFBIの女性捜査官のウェルズ(マギー・Q)とFBIワシントン支局の副長官アトウッド(マリク・ヨバ)の2人だけ。アトウッドは息子を息子を誘拐されて、犯人の身代わりで逮捕されてしまったり、ウェルズもいつも一人で捜査して、拉致されたり、狙われたりと、すぐに窮地に陥ってしまう。もちろん、ホワイトハイス内にも協力者がいたり、誰が敵かわからない状況なので小人数での捜査を志向しているのだが、それにしても国家転覆が目的の組織的な巨大陰謀に立ち向かうのが、2人の捜査官と、官僚的な内部監察官、IT担当の技官と大統領の警護官だけというのは、あまりに手薄すぎる。
 そもそもFBIの2人も、捜査官としてはありえない手順で動いており、プロなのか怪しい限り。FBI捜査官は一人で単独行動はしないだろうし、自分の子供がいくら大事でも、誘拐犯と情けない取引するのはありえない。
 スタジオ撮影だろうが、崩壊した議事堂の瓦礫などはかなり大掛かりに作ってああるし、ワシントンが舞台なので、カナダ撮影といっても都会のオンタリオで撮影されていて、ビンボー感はあまりない。
 シーズン1はともかくも最後まで飽きさせない出来だ。2017年から2018年にかけシーズン2(全22回)もすでに放映されたがABCは残念ながらシーズン3をキャンセルしてしまった。ここまでかと思われたが、ネット配信権利を取得していたNeflixが買い取り、全10話に変更した上でシーズン3の製作を発表している。この(2019)夏には公開される予定である。
 今のところ、番組自体もなんとか「サバイバー」である。

by 寅松

日本語字幕版

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