海外ドラマ

真実を知る者/犯人はこの中にいる

スコットランドの隔絶した僻地の2家族が辿り着くおぞましいラスト!

One of Us
2016年 イギリス カラーHD 60分 全4話 BBC/Netflix AXNミステリーで放映/Netflixで視聴可能
原作/クリエイター:ハリー・ウィリアムス、ジャック・ウィリアムス 監督:ウィリアム・マクレガー
出演:ジュリエット・スティーヴンソン、ジョン・リンチ、ジョアンナ・ヴァンダーハム、ローラ・フレイザー、ジョー・デンプシー、ジョージア・キャンベルほか

 AXNミステリーがつけたタイトルは「犯人はこの中にいる」でまるでアガサクリスティーものみたいな寝ぼけた雰囲気。Netflixの「真実を知る者」の方がまだしもだが、いずれにしてもイメージが違う。原題は<One of Us>で、孤立した2家族しかいない場所で起こった殺人に対して、皆が犯人を憎んでいたという意味合いでのタイトル。誰もが当事者というニュアンスだ。
 「ザ・ミッシング ~消えた少年~」や、つい先日もAmazon Primeで「ザ・ウィドウ ~真実を求めて~」を発表したばかりのウィリアムズ兄弟が、原作/脚本/製作で2016年にBBC+Netflixというスキームで製作したミニシリーズ。ところが、「ザ・ウィドウ」などよりずっと出来が良い!CMとショートフィルムで力をつけた若いディレクター、ウィリアム・マクレガーのセンスがモノを言っているのか?
 古い家庭用ビデオにナレーションで始まるオープニングがとても秀逸だ。短いシークエンスで、幼い頃から隣同士で同じ大学に通ったそれぞれの家族の息子と娘が愛を育むまでが語られる。何かと思うと、結婚式のメモリアル映像なのだ。その場で結婚した美男美女の二人。ところがこの二人の物語だと思ったら、なんと新婚旅行から帰った二人はアパートで血まみれで惨殺されているという話。いやでも物語に引き込まれる。
 二人を殺害したのはドラッグ中毒の男で、アパートから奪ったガラクタを売って電車賃を捻出しようとするがうまくいかない。結局、自動車強盗を働いて奪ったレクサスで、握りしめた封筒の郵便番号を手掛かりに北を目指す。折しも大嵐の真夜中、男が目指していたのは、二人の故郷、スコットランド北部(ハイランド)の僻地だった。そして、目的地までたどり着いたところで車は事故を起こす。
 驚いて家から出てきたのは、娘と息子の惨殺報道を受けて、悲しみに暮れていた隣同士の家族だった。
 タイトルバックは、最近のBBC物らしく洒落ているが、特にドローン撮影と農場の納屋や荒涼とした風景を組み合わせて、2家族が外の世界とは隔絶して生活しているスコットランド僻地の雰囲気を強調している。(撮影自体はハイランド地方ではなく、スコットランドとイングランドのボーダー地帯=比較的南の方で行われたらしいが、その風景は十分寒々しい。)
 この隔絶した土地というのが様々な理由で大きな意味を持ってくる。
 僻地とはいえ、現代のイギリスの話なので家族はそれぞれだ。息子を殺されたエリオット家は、どうやらややアル中らしい気の強い母親ルイーズと、責任感の強い看護師の娘クレア、黒人の嫁がレイプされたことで気が立っている庭師の長男ロブ。父親の方はずいぶん前に家族をおきざりにして音信が途絶えている。
 娘を殺されたダグラス家は、まるでピルグリム・ファーザースのような風貌の農場経営の父親ビルと母親のモイラ、引きこもりの弟ジェイミー、家族の友人で農場を手伝うアラステアが居合わせる。しかし、次第にそれぞれが秘密を抱えていることもわかってくる。
 イブニング・スタンダード紙はこのドラマを「ロミオとジュリエットと(タランティーノの)ヘイトフルエイトのマッシュアップ」と評したらしいが、おとぎ的な話ではではない。
 例えば捜査に当たるエディンバラの刑事ジュリエット・ウォレスも、現代的な闇と関わりがある。通常の手術が難しい脳腫瘍の娘の治療費を捻出しようと、警察の押収した覚せい剤の横流しをしているのだ。演じているのがローラ・フレイザーなので、まさに「ロック・ネス」のアニーと、「ブレイキング・バッド」のリディアをマッシュアップしたような役どころである。
 フレイザー以外では、クレアを演じたジョアンナ・ヴァンダーハムの演技が印象に残る。若手だが、舞台女優もつとめる本格派だ。
 物語は最後まで謎を引っ張り予断を許さない。最後の最後で、頑固なスコットランド人の恐ろしさが浮かび上がるという意味では、風景も風貌も重要な役割を演じている。あと、ドラマの最初の方でウォレス刑事の部下としてでてくる、訛り丸出しのやる気のないおっさん刑事(アンドリュー・バーカー:ミュージシャンでもあるスティーブ・イベッツが演じる)が、最後の最後で思わぬ存在感を示すのも嬉しい。
 AXNミステリーで放映したが、現在、Netflixでも視聴が可能である。

by 寅松