海外ドラマ

刑事カーディナル 〜悲しみの四十語〜 (シリーズ1)

カナダ発ダークサスペンス!極寒冷地で仕事にのめり込む陰鬱刑事の秘密が暴かれる!

Cardinal Series1: Forty Words for Sorrow
2017年 カナダ カラーHD 40分 全6話 CTV/BBC Four スーパードラマ!TVで放映
原作:ジャイルズ・ブラント、クリエイター:オーブリー・ニーロン 監督:ダニエル・グルー
出演:ビリー・キャンベル、カリーヌ・ヴァナッス、アリー・マクドナルド、ブレンダン・フレッチャー、キルステン・トンプソン、グレン・グールドほか

 シリーズ1の日本語副題「悲しみの四十語」(書籍のタイトルに準じたようだが)は直訳ではあるが、どうも意味不明で困ったタイトルだ。<Forty Words for Sorrow>は40の単語を重ねても子を失った親の悲しみは言い尽くせない・・というフレーズから来ているので、もう少しましな表現があったろうに。英国推理作家協会が主催するCWA賞の次点、シルバー・ダガー賞を獲得した、カナダ人作家ジャイルズ・ブラントの小説が原作だ。なるほどストーリー的には安心感がある。
 謹慎を命じられていた刑事、ジョン・カーディナルが呼び出された。捜査打ち切りで失踪者として片付けられていた、ネイティブカナディアンの少女が氷漬けの遺体で発見されたのだ。カーディナルは、少女の失踪を殺人事件だと主張して謹慎を命じられていた。改めてカーディナルを責任者として捜査班が立ち上げられる。捜査開始とともに部長から新しい相棒として紹介されたのは、金融捜査課から配属されてきた美人刑事リズ・デロームだった。「新米の相棒?」と迷惑がるカーディナルだが、彼女が移動してきたのは、潜入捜査官時代にカーディナルがドラッグディーラーに情報を流して、見返りに金を受け取っていた可能性について、内偵捜査をするためだった。
 心の底でお互いを信用しない相棒同士の捜査が始まる。しかし、次第にカーディナルはデロームの刑事としての優秀さを認めはじめ、一方デロームも、寡黙で心を明かさないカーディナルの、内に秘めた被害者への深い共感と、捜査への執念に絆されてゆく・・・。
 ドラマの進み方はいたってトラディショナルだが、ケヴェック生まれの監督、ダニエル・グルー(Podzという別名でも野心的な作品を多く監督している)は、よく練られたカメラワークと丁寧な描写で、寒々とした舞台の雰囲気と、主人公の心情をうまく表現している。舞台となる「アルゴンキン湾」という名称は架空だが、作家のジャイルズ・ブラントが想定したオンタリオ州のノース・ベイ周辺(アルゴンキン州立公園がすぐ近くにある)で実際の撮影も行われたようだ。
 オープニングの処理も美しい。北欧ドラマやBBC物でよく見られるアフター・エフェクト(ソフト)ギミック満載のオープニングタイトルだが、ドローンによる空撮を上手に利用して、雰囲気を盛り上げてくれる。デンマーク人シンガー・ソングライター、アグネス・オベルのテーマ曲ともども北欧ドラマ感が否応なく盛り上がる。
 主演のカーディナル役のビリー・キャンベルは、アメリカ人。なかなか渋いイケメンで、寡黙な演技が功を奏しているようだ。なんと若い頃は、ツルツルの美少年でレトロSFヒーローものの「ロケッティア」に主演していたとは気づかなかった。なつかしい!そのほかデンマークドラマ「The Killing / キリング」(Forbrydelsen)のアメリカ・リメイク版で野心的なシアトル市議会の議長を演じていた。
 リズ・デロームを演じるカリーヌ・ヴァナッスはケヴェック出身。フランス語圏で十代から女優として活躍、アメリカではマデリーン・ストウ主演の「リベンジ」や、クリスティーナ・リッチ主演で60年代アメリカのスチュワーデスとパイロットを描く、「PAN AM/パンナム」などに出演している。美人だが今回は芯の強い女性を演じている。
 主犯の男を演じたブレンダン・フレッチャーがどうもそんなに凶悪な感じに見えないのと、こいつがここまで人を殺す動機だけがやや腑に落ちなかったが、共犯を演じる若い女優、マリー・マクドナルドはなかなか凄みがあある。
 物語の方も原作物だけあって、(エリックの動機を除けば)細部の説明も行き届いている。犯罪の方は、最後の少し前で片がつくので、最後まで残るのがカーディナルの秘密である。派手ではないが、心に残る意外な結末と言えるだろう。
 ドラマはすでにシーズン4まで決定して、シーズン3までが(カナダで)放映されたばかり。日本でもスーパードラマ!TVが続いてシーズン2、「刑事カーディナル 〜記憶に巣喰う虫〜」を放映予定である。

シリーズ2「記憶に巣喰う虫」はこちら>>
シリーズ3「過去からの報せ」はこちら>>
シリーズ4「凍てつく夜に」はこちら>>

by 寅松