ホームカミング

そりゃ、ジュリア・ロバーツはちょっと怖いけど(笑)、名作映画なみに格調高い記憶をめぐる物語!

Homecoming
2018年 アメリカ カラーHD 24〜37分 全10話 Amazon Video Amazon Primeで視聴可能
クリエイター/原作:マイカー・ブルームバーグ、イーライ・ホロウィッツ 監督:サム・エスメイル 撮影監督:トッド・キャンベル
出演:ジュリア・ロバーツ、ボビー・カナヴェイル、ステファン・ジェームズ、シェー・ウィガム、シシー・スペイセク ほか

 コメディでもないのに30分という微妙な長さ。オリジナルは同名のポッドキャスティング作品という変わり種。しかし主演は大女優ジュアリア・ロバーツさんだし、自らエグゼックティブ・プロデューサーとして全面的に関わるという力の入りよう。
 判断に困りながらもとりあえず見てしまうと・・出だしは暗めだがどんどん引き込まれてしまう。
 なんといってもカメラがすごい。実験的というより、格調高く、まるでハリウッド技術の粋を集めた名画を見ているような雰囲気だ。画面の使い方も面白い。過去の出来事はフルサイズでカラフルだが、現代の出来事は左右が狭まり、まるでiPhoneで縦に撮影したような画面になっている。しかし、これはのちに、主人公の記憶と関係があることが判明する。哲学的に思えるほどの仕掛けである。ちなみに中身は非常に濃くて30分とはとても思えない。
 話の方は、「ホームカミング」と呼ばれる帰還兵のためのプログラムを運営している施設で始まる。表向きは、戦地でPTSDなどの心理的障害を負った戦士たちが、帰国後に社会に適応できるよう準備期間を設け、カウンセリングや仕事に就くための訓練を行うプログラムだが、民間に委託され、業務を行うのはガイストという日用化学製品を手広く手がける(要するにP&Gみたいな)会社である。どうやら、行うのはカウンセリングやロールプレイだけでなく、極秘に投薬を行って、その結果を観察しているようである。
 ジュリア・ロバーツ扮するカウンセラー、ハイディ・バーグマンはこの施設の現場のトップだが、悪辣でおどろくほど喋りまくる上司コリンに常に電話で圧力をかけられ、疲弊しながらもなんとか帰還兵の力になろうと仕事に打ち込んでいた。しかし、ハイディ自身もPTDSに効果があると信じていた薬には、とんでもない別の効果があることがわかってくる。そして、プロジェクトの目的自体も・・・。
 そんな内容だが、話が一直線で進むわけではなく、そもそも当時のシーンと現代のシーンが交互に描かれ、その全貌はすこしづつ見えてくる仕掛けだ。
 過去のシーンでは、主にハイディが面接を担当するハイチ系の若者、ウォルター・クルーズとの微妙な交流を軸に描かれる。ウォルターは、どうやらハイディに惹かれているらしく、そのため、幾つか危機があってもプログラムを途中でやめようとしない。ハイディも上司のコリンに強く圧力をかけられても、ウォルターのプログラムを続けるべきだと交渉する。実年齢51(1967年生まれ)のジュリア・ロバーツと、実年齢25歳(1993年生まれ)のステファン・ジェームス(クルーズ役)は、正直親子にも見えるので、(役柄としては40台と28歳くらいでギリギリのつもりなのかもしれないが)ロマンス的には少々辛い。さすがに自分に正直に生きるのが身上のジュリロバでも、そのへんは感じるのだろう。ドラマ上もこのおたがいの好意は、奥ゆかしくも切ない結末へたどり着く。
 現代シーンは、もっとヒリヒリしたタッチだ。後半の終わりの方まで、現代のシーンは左右が切り取られた画面で描かれ、色調なども調節されていない。ハイディは母親の家に住み、タンパの港に面したレストランで淡々とウェイトレスをしている。そこに、国防総省の調査官であるトーマス・カラスコ(「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」のイーライ・トンプソン役で知られるシェー・ウィガム)がやってくるが、ハイディはクルーズのこともプログラムのことも覚えていないとカラスコを追い返す。話したくない事情があるように見えるが・・・、話が進むと本当に何も覚えていないことがわかってくるのだ。
 ジュリア・ロバーツは、もちろんラブコメディで大成功を収めた役者だが、自分のキャリアの中でも実際にアカデミー賞をとった「エリン・ブロコビッチ」を大事な作品だと思っているのかもしれない。自らプロデュースに名を連た本作は、ある意味第2のエリン・ブロコビッチと言えるだろう。太ったマナティーの不細工な看板が醜悪なレストラン、ファット・モーガンズでのうらぶれたウェイトレス姿は、その意味でもはまっている。
 最初は不安と後悔の念を抱えた若者、投薬により人格が変わったようになってゆくクルーズを演じたステファン・ジェームスは、まだ若いのに実力がある。
 ハイディの上司コリンを演じたボビー・カナヴェイルは、「ウィル&グレイス」のウィルの彼氏役や、「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」のジップ・ロゼッティ役で知られるが、驚異のしゃべりまくりで、実に悪辣な人物を演じきった。
 そのほか、キャリーのシシー・スペイセックがハイディの母親役で登場。ほんとーにいそうな母親を演じている。
 ただし、本作の一番の魅力は華麗なカメラワークと、凝りまくった演出だろう。監督のサム・エスメイルと撮影のトッド・キャンベルは、ドラマ「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」(「ボヘミアン・ラプソディ」であまりに有名になってしまったラミ・マレックの主演サスペンス)以来のコンビだ。
 特にエジプト系アメリカ人で、「高校の頃は、いつも自宅でスタンリー・キューブリック映画祭を開いていたよ」と言うエスマイルの演出は、画面の面白さだけでなく、ロケーションや音楽/効果音の使い方など、細部に至るまで映画へのオマージュで溢れている。
 ほぼ、効果音的な音楽で怖さを盛り上げながら、最後のシーンで突然BGMが消え、突き放したように自然音と何気ない現実風景の上にクレジットが続く途中回のエンディングなどは、確かにキューブリック的かもしれない。
 娯楽ミステリーの要素はあるが、最終的には人にとって「記憶」とは何かということを問う「物語」に仕上がっている。全体のラストも映画のような余韻を残した終わり方だが、ストーリー的にこの先があるようには思えない。しかし、アマゾンは2シーズン分発注済みとのことなので、シーズン2があるということなのだろう。
 どうするつもり?

by 寅松

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