特捜部Q 檻の中の女/キジ殺し

特命係かX-Filesか未詳事件特別対策係か?資料整理係「Q課」に飛ばされた、デンマーク版暴走デカの逆襲!

Kvinden i buret(檻の中の女)
2013年 デンマーク カラー 97分  Zentropa WOWOW /洋画専門チャンネルザ・シネマで放映 Amazon Prime/Huluで視聴可能
監督:ミケル・ノルガード 脚本:ニコライ・アーセル 原作:ユッシ・エーズラ・オールスン
出演:ニコライ・リー・コス、ソニア・リクター、ファレス・ファレス、ミケル・ボー・フォルスゴーほか
Fasandræberne(キジ殺し)
2014年 デンマーク/ドイツ/スウェーデン カラー 120分  Zentropa WOWOW /洋画専門チャンネルザ・シネマで放映 Amazon Prime/Huluで視聴可能
監督:ミケル・ノルガード 脚本:ニコライ・アーセル、ラスマス・ヘイスターバング 原作:ユッシ・エーズラ・オールスン
出演:ニコライ・リー・コス、ファレス・ファレス、ピルウ・アスベック、ダニカ・クルチッチ、サラ・ソフィー・ボウスニーナほか

 世界36カ国で翻訳されているデンマーク人作家、ユッシ・エーズラ・オールスンの人気ミステリーシリーズ「特捜部Q」の映画化版。「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」の脚本を担当したニコライ・アーセルが脚本を手がけているのが、一番の売りらしい。
 第1弾が「檻の中の女」、第2弾が「キジ殺し」で、すでに第3弾「Pからのメッセージ」第4弾「カルテ番号64」も映画化されている。
 主人公のカール・マークは、仕事に熱心なのはいいがともかく暴走しがちな刑事。「檻の中の女」ではオープニングから、捜査対象のコテージの前の車でイライラしながら応援を待っている。とうとう耐えきれず「仲間を待った方がいい」と止める同僚たちを振り切って現場に乗り込と、そこには遺体が。しかし、思わぬところに犯人が隠れていて、ついてきた同僚2人とともに撃たれ、銃撃戦に。
 同僚のうち1人は死亡、1人は再起不能の重症。自分だけはなんとか回復するものの、休養ののち出勤すると上司からこう告げられる。
「お前は、もう殺人課においておくわけにはいかん・・・お前と組みたい奴はいないからな・・」
 そんなわけで、カールは法務省が資金を出して過去の全事件の資料を検証するための整理プロジェクトの部屋に一人送られることになる。ま、刑事ものにはありがちな、要するに地下の倉庫ですな。翌日倉庫に出勤すると、一目でイスラム系の男が、ちゃんと資料を整理して部屋を片ずけている。助手として配属されたアサド(シリア系)だと言う。「この部署は冗談みたいなところだ」さっさと元いた部署に戻れと意見するカールだが「2年も毎日倉庫でスタンプを押してました」この部署の方がマシだと笑うアサド。こうして、暴走デカとイスラム教徒のコンビが誕生、デンマーク版のどす黒いコールドケースに立ち向かうことになる。
 「檻の中の女」で扱うのは5年前にフェリーに乗船中に入水自殺したと片付けられていた美人議員ミレーデ・レンゴーの事件。幼い頃に交通事故で両親を亡くしたミレーデは、自閉症の弟のウフェの面倒を見ていて、弟を連れてフェリーに持っている際に行方不明になる。ウフェが何かを目撃しているかが焦点となるのだが、病状が悪化して治療施設にいるウフェの心を開くのは容易ではない。予想通り、カールの強引な聞き取りではうまくいくはずもなく、ヒントを見いだすのは逆に粘り強くウフェに接触していたアサドの方だ。
 接点があるとは思えない犯人が浮かび上がり、男に誘拐されたミレーデは5年間も加圧器の中で少しづつ加圧された状態で監禁されていたとが判明するのだが・・・。孤児院育ちの犯人と被害者の接点が最後の一瞬までわからないようになっているところが、最大のミソでなかなか美しい。

 「キジ殺し」では、第1作で事件を解決し報道されたことでQ係の株があがり、課長もおだてられ、新しい女性秘書ローセ(ヨハン・ルイズ・シュミット)も決まったところに事件が飛び込んできます。
 土砂降りの夜、祝賀会が行われたコペンハーゲン警察の外でおかしな老人が待ち構え、帰ろうとするカールの胸ぐらをつかんだ。「私の手紙を読んだのか?」あんたのことは新聞で読んだ、再捜査してくれ!老人は必死の形相でせまるが、時間ができたらやるからとカールはその場を逃げ出してしまう。ところが翌日、その老人が自殺死体で発見され・・・・部屋にはカールに当てた膨大な捜査資料と飼い主を失った猫が!
 男は元警部で、自分の子どもたち、双子の兄妹がレイプ殺害された20年前の事件をしつこく捜査していたのだ。
「おれは彼の訴えを無視したんだ・・」と悔やむカールの無鉄砲な捜査が、またもや再び始まります。
 捜査資料の写真から、行き当たったのは、森に囲まれた敷地に建つ名門私立学校。どうやら事件には、この学校に通っていた財閥の子息たちが関わっているいるらしい。若き日に犯人たちと共に過ごし、当時の事件の鍵を握る美少女が、今は精神を病んで浮浪者となって行方不明らしい・・という意外な展開から、事件は複雑に過去と現在を行き来して説明されることに。
 しかし、相変わらずカールの捜査はノープランで、業を煮やしたアサドがウルトラC級の協力者を見つけ説得する始末。最後には2人とも犯人に捕まり、あわや、ここまでかというところで、アッと驚く壮絶なエンディングが訪れます!

 主人公のカールを演じるのは、「キリング」<Forbrydelsen>シーズン3で、サラ・ルンドの警察学校時代の同期生として登場し、ちょっといい仲になりかける情報局の捜査官ボークをやっていたニコライ・リー・コス。キリングでは最後にマカロニウエスタンばりの逸脱を見せるルンドにあわてて「なんてことするんだ!」と狼狽していたが、この主演作では、とにかく言葉が足りない無骨な刑事を演じている。
 しかし、ブレずに突き進む無頼派刑事なのはいいのだが、こいつは捜査も腕っ節も特に取り柄がない。いつも助けてくれるのは、とぼけたイスラム教徒アサドの方だ。ついに第2作では、説得や聴取の頭脳プレイだけでなく、射撃の腕もどうやらアサドの方が上だと判明してしまうから情けない。
 アサド役は、ビンラディン殺害を描いた、実録版「ホームランド」とでもいうべき傑作映画「ゼロ・ダーク・サーティ」ほかで知られる、レバノン系スウェーデン人俳優ファレス・ファレス。この2作の後、トム・ロブ・スミス原作の話題作「チャイルド44 森に消えた子供たち」では、ニコライ・リー・コスとまたしても共演することとなった。
 捜査する側はこの2人組だが、両作品とも、被害者としては美少女が登場するところが特徴となっている。スーパーモデルさんというほどではないが、デンマーク的で、ある意味リアリティがあるくらいの女の子たち。それが幼さが残る時期に見せる危ない魅了をよく捉えていて、その辺は監督ミケル・ノルガードの趣味が出ているのかもしれない。
 3作目「Pからのメッセージ」ではエホバの証人を背景に起こる少年少女の誘拐事件、4作目「カルテ番号64」では、かつての女子収容所とアパートで発見された少女たちの遺体を巡る謎ときで、いずれも若くて美しい女の子がたくさん出てきますが、監督はそれぞれ別になっている。
 「檻の中の女」は全体が97分で、キャラクターの説明にも時間が取られる事情はあるのだが、まあTVドラマのレベルという内容だ。「キジ殺し」は、さすがに120分という長さもあり、ドラマ性も勝っている。ただ、戦略として日本ではわずかな劇場でアリバイ公開したのち、公開映画としてプロモーションしているが、映画としての完成度を期待するよりは、連続もののミニシリーズドラマとしてみる方が納得出来る作品ではないかと思う。もちろんその意味では十分楽しめる。
 現在上記の2作はAmazonとHuluで視聴可能。3作目の「Pからのメッセージ」がAmazonでは400円有料視聴で、4作目の「カルテ番号64」は、まさに(2019年)1月11日から劇場公開中である。
(※ 2020年6月現在、「Pからのメッセージ」はAmazon Primeでの無料視聴が可能になった。)

by 寅松

「特捜部Q 檻の中の女 Kvinden i buret」

「特捜部Q キジ殺し Fasandræberne」

3作目「Pからのメッセージ」評はこちら>>