13 サーティーン/誘拐事件ファイル

13年間も誘拐されつづけていると人はどうなるのか?ということを真面目に追求した驚愕のミステリー!

Thirteen
2016年 イギリス カラー 60分 全5話 BBC AXNミステリーで放映/Hulu 
クリエイター:マーニー・ディケンズ
監督:ヴァネッサ・キャスウィル、チャイナ・ムー・ヤング
出演:ジョディ・コマー、ヴァリーン・ケイン、リチャード・ランキン、アナイリン・バーナードほか

 日本やアメリカでは時々こういうニュースがあるけれど、イギリスではこういうケースはないらしい。ドラマは、オープニングからごくごくありふれた住宅街のドアから裸足の女の子が飛び出してくるところはじまる。心ここに在らずといった感じの女の子は、とりあえず道路に飛び出すと改めて周りを見回して、突然走り出す。とにかく全力で公衆電話を見つけると飛び込んで、警察に電話。「アイビー・モクサムよ。13年まえに誘拐されて、いま逃げてきたの!助けて!」
 つかみはOKだし、最近のBBCのドラマらしくなかなかオープニングがかっこいい!
 13歳の時に、誘拐されてちょうど13年間監禁されていた女の子、アイビー・モクサムは、警察に聴取された後家族の元に返される。日本だったらこうはいかないだろうなあ。ずいぶんと長いこと病院に入院させられて、精神科医のカウンセリングも長いに違いない。
 そのへんは、イギリスだからなのか、それとも舞台となっている南西イングランドのブリストルが、ゆるい雰囲気なのだろうか?聴取もカウンセリングもそこそこに、ともかく、本人の希望で彼女は家に帰ってしまう。しかし、そこはすでに13年の年月がたった世界が待っているのだ。
 娘の帰還を聞いて、大急ぎでもどってきた父親は実は愛人と生活しており、父母は別居生活。父が出て行った家には、妹の彼氏が入り込んで同居しており、2人は結婚の準備の真っ最中だが、母親は父を呼び戻し、とにかく戻った娘のまえで、元の家族を演じることを命じている。
 アイビーが疾走する直前に付き合っていた、ティムはすでに結婚しパブの店主に。親友だったエロイーズは、髪が金髪のパンクスに変身して、いまではロンドンに住んでいるらしい。
 アイビーは、これらのことを一挙に知るわけではない。13歳の時の気持ちで脱走してきて、その後の現実は徐々に彼女を目覚めさせる。
 一方誘拐犯は逃走したままで、13年間殺されずに、犯人と生活していたアイビーには、明らかに話していない秘密がある。それを直接聞き出す役目の担当が、リサとエリオットの男女の刑事コンビ。(「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」に出ていたアイルランド出身のヴァリーン・ケインとスコットランドの男優リチャード・ランキンが演じる)
 この二人は同僚ながらどうも付き合っているようでもあるのだが、その辺が微妙。しかもリサの方はアイビーの証言に矛盾があることにこだわり、何かを隠していると追求しようとするのだが、エリオットの方は、瞳がウルウルのアイビーにはとことん優しくなってしまい、そのことで二人の中にも亀裂が入ってしまうのだ。(やれやれ)
 そうしているうちにも、犯人は野放しのまま!ついには新しい少女誘拐事件を起こして逃走するという急展開に。地元警察の所長は解任され、本部から警視正というから超大物がやってくるのだが、予想どおり事態は好転しない。
 犯人からアイビー宛に手紙が届き、その証言の矛盾も明らかになってきて・・・。
 微妙な線をついたストーリーだが、クリエイターと監督(2人)の両方とも女性のチームは男女の気持ちのズレや、家族の中での考え方のズレを見逃さない。特に男と女の物の見方の違いにはフォーカスしていて、男たちが主人公のアイビーを助けようとしてても、惑わされ、結局は傷つけることになってしまうような物語が丹念に描かれる。13年前の彼氏、イケメンの刑事、父親、元の学校の校長、妹の彼氏、陣頭指揮をとる警視正、男たちは努力をしても心に闇を抱えた彼女を救うことはできない。男は全員役たたずなのだ。アメリカのドラマだったら絶対こんなストーリーは不可能だろう。
 感情も描けているが、ミステリーとしての展開も十分で、最後まで一気に見られる。5話とコンパクトにまとめたのが功を奏したのかもしれない。特に、最終回は本当に最後の瞬間までハラハラさせられる。
 主人公のアイビー・モクサムは、「女医フォスター」などで知られる、ジョディ・コマーが好演。ある時は13歳で成長が止まったような不安げな表情を、ある時は男を操ろうとする邪悪な面をちらつかせる。実に難しい役回りだが、吸い込まれそうな瞳のコマーは適役だ。
 彼女と付き合っていたティムはひたすら優しい男で、いまでは黒人の強そうな奥さんと暮らしていることも彼女を気遣ってなかなか言い出せない。ジョディ・コマーの少女漫画的な顔と並んでも引けを取らないハンサム、まるでイライジャ・ウッドみたいなウェールズの若手俳優アナイリン・バーナードが好演した。
 見ていて、もう一つ気にかかるのがオープニング・テーマに使われているかっこいい曲だ。民族的なリズムに乗せて、女性が歌う形容しがたい曲だが、ドラマの不安な内容を連想させる妙味のあるマッチングである。イギリスのアーチストではなく、ボーカル&アコーディオンのノナ・マリー・インヴィを中心とするミネアポリスの民族音楽系フォーク・グループ<Dark Dark Dark>。2010年のアルバム<Wild Go>のトップに納められた<In Your Dreams>という曲だ。
 クリエイターのマーニー・ディケンズと、ディレクションのヴァネッサ・キャスウィルは、今年(2018)「ウエスト・ワールド」などに出演した若手イケメンのベン・バーンズが主演するBBCの最新スリラー<Gold Digger>で再びコンビを組んでいるようだ。

*/ Hack for Facebook Dispaly