海外ドラマ

The Brink / 史上最低の作戦

史上最低の作戦というより、史上最低の男たちが第三次世界大戦を食い止められるのか?起こしちゃうのか?という身悶えする話!

The Brink
2015年 アメリカ カラー 25-30分 全10話 HBO スターチャンネルで放映/Amazon Prime
クリエイター:ロベルト&キム・ベナビブ
監督:ジェイ・ローチ、マイケル・レーマン、ティム・ロビンス
出演:ティム・ロビンス、ジャック・ブラック、パブロ・シュレイバー、ジョン・ラロケット、ジェフ・ピアソン、イーサイ・モラレス、アーシフ・マンドヴィ、マリベス・モンローほか

 HBOがしかけた外交ブラック・コメディだが、なんと1シーズンで終了(2シーズン目が予告されていたのに・・)となった問題作!ものすごく、最低でブラックなエピソード満載なのだが、それはアメリカの政権が民主党的でリベラルな世界観を共有し、表向きの威厳を保っていたからこそ意味があるコメディであった。2015年には、まだ世界はまだそうだったのだ!表向き立派な言葉しか言わないオバマ政権の内情が、こんな最低だったらそれはそれなりに楽しめるよな。
 しかし、トランプの登場が世界を変えて、コメディの世界さえも変えてしまった。
 だって、本物の米国大統領が半分アルツハイマーの低脳オヤジで、ツィッターでありえないバカぶりを毎日露呈し続けるなんて、コメディー以下の現実だから。どんな低俗な「笑」を取ろうとしても、現実が先をいっちゃってる世界なんて恐ろしいよ。(日本も今ではほとんど同じだが・・)
 というわけで、なんとか頭を2015年の国際状況にまで戻してみれば、爆笑のコメディである!なんといってもティム・ロビンスとジャック・ブラック大物コンビなんだから。最近どーも、上滑りが多かったジャック・ブラックもこのドラマではバッチリ、薄っぺらい大使館職員を熱演!
 ティム・ロビンスはプロデュースに噛んでいるのはもちろん、自分でも監督するほどの熱の入れようで、とんでもない国務長官をオーバーすぎるほどに思い切り演じている。ここまで変態野郎だと気持ちがいい。変態で最低だが、戦争だけは何としてもやめさせようとする平和主義者なところがみそ。
 大物2人が国務長官と、現地(パキスタン)大使館の下級職員という一応政治側の人間であるのに対して、もう一人の主役が空母ジェラルドフォード所属の優秀なパイロットだが、薬剤師の元妻から送ってもらう薬物を艦内で売りさばく売人でもあるティルソン。ロベルト・ベナビブの出世作「Weeds ママの秘密」や「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」でも知られるパブロ・シュレイバー(なんと「レイ・ドノヴァン」のリーブ・シュライバーは異母兄弟らしい)がいい味を出している。
 こいつは、エリック・ラディン演じるダメ相棒のグレンと出撃しては、目的達成できずにいつもひどい目にあうばかりだが、最後の最後で捨て身の活躍をすることに!
 そのほか、ティム・ロビンスの宿敵で、大統領に先制攻撃を常に進言する国防長官に、「デクスター 警察官は殺人鬼」で老獪なマイアミ署の本部長代理を演じたジェフ・ピアソン。ブッシュ時代に任命された、頭のおかしい福音派の在パキスタン大使に、「ボストン・リーガル」などで知られる、ジョン・ラロケット。インド生まれのコメディアン、俳優のアーシフ・マンドヴィが、クーデターに巻き込まれるジャック・ブラックの運転手役で飛ばしている。
 女性では、国務長官の妻や砂漠でティルソンたちを助ける盗掘犯の妻などみんな変態気味だが、最後までティム・ロビンス演じる国務長官になんとか世界を救わせようと頑張る健気な秘書を演じたマリベス・モンローが印象に残る。
 ギャグと同じくらい楽しいのが、実は最後の1曲だ。ドラマは目一杯詰め込んだ30分ものだが、毎回エンディングには60年代から70年代頭の大有名なロックの名曲がかかって、それが実にぴったりで笑わせてくれるのだ。パキスタンで不吉なクーデターが起こる第1回でCCRの「フォーチュネイト・サン」、独裁者が怪しことを言い始める2回目ではジョン・レノンの「インスタント・カーマ」が。そのほか、ジミヘン、バッファロー・スプリングフィールド、ストーンズ、ディラン、はてはブラインド・フェイスやクリームまで。もちろんあわや世界大戦かというラス前の回では、再びCCRが登場し、当然のように「バッド・ムーン・ライジング」がかかる。爆笑。
 ものすごく凝った曲ではなくて、大有名な曲ながらさりげなく内容に合っている。実際の監督は1回目だけだが、この辺の選曲にはジェイ・ローチが関わっているのかもしれない。
現在は、アマゾンプライムで視聴できる。

by 寅松