オンランシネマ

意表をつくアホらしい作戦

アホでけっこう! 意表をついて面白い「ナショナル・ランプーン」の裏話

A Futile and Stupid Gesture
2018年 アメリカ カラー 103分 ネットフリックス配信
監督:デヴィッド・ウェイン
出演:ウィル・フォーテ、マーティン・マル、ドーナル・グリーソン、エミー・ロッサム

 1970年代に全盛を誇ったアメリカのパロディ雑誌「ナショナル・ランプーン」の内幕を描いたポップカルチャー再現ドラマで、中心メンバーだったダグ・ケニーの自伝的物語が中心になっている。映画ファンなら『アニマル・ハウス』(78)やチェヴィー・チェイスの「ナショナル・ランプーン」シリーズ(『ホリデーロード4000キロ』『ナショナル・ランプーンズ・ヨーロピアン・ヴァケーション』など)は知っていても、同じようなメンツが揃っていた「サタデー・ナイト・ライブ」との関係など、日本人にはよくわからないことがすべてわかるのが気持ちいいし、かなりスマートなストーリー展開で「意表をつく」面白さ。まあ、この邦題は、どうかと思うが。テイストとしては、ジム・キャリーがアンディ・カウフマンをやった『マン・オン・ザ・ムーン』(1999)を思い出した。

 ダグ(ウィル・フォーテ)は両親の期待を背負ってハーバード大学の法科へ進むが、パロディ雑誌「ハーバード・ランプーン」にうつつを抜かし、卒業と同時にエリートコースを踏み外して、相棒のヘンリー(ドーナル・グリーソン)とパロディ雑誌「ナショナル・ランプーン」を創刊する。最初は苦戦するも、徐々におもろい仲間たちが増え、ディズニーからフォルクスワーゲンまで訴訟を恐れることなく過激なパロディを発表し続けて若者世代に人気を得るまでになる。ラジオ番組を始めると、ジョン・ベルーシ、チェビー・チェイス、ギルダ・ラドナー、ビル・マレーなどのコメディアンたちを起用して人気爆発、ライブショーまで行うようになる。しかし、大金を得たヘンリーは「楽しくなくなった」と辞職し、ダグはスランプに。その間にテレビで「サタデー・ナイト・ライブ」が始まってしまう。発奮したダグの脚本・製作で作られた『アニマル・ハウス』が大ヒットし、ダグは意気揚々とハリウッドへ進出するが、ドラッグ漬けになってボロボロになってしまう……。

 ダグの少年時代から始まり、年を取ったダグ(テレビシリーズ『オヤジ・アタック』のマーティン・マル)がときおりドラマの中に登場して案内役になって進む展開がクレバーだ。最後になって、その大胆でシュールな作戦が明かされるのだが、今までにこういうアイディアはあったのかな。寡聞にして知らないが……見てのお楽しみだ。
 知的でおとなしい都会的なヘンリーに比べて、ダグは短気で問題を起こしやすかったようで、そんな衝動的な部分が彼の運命を決めたのだろう……。ハーバード時代から、結局のところ「フードファイト!」と食べ物を投げ合っていたバカ学生のまま、大人になることなくアメリカ中を大騒ぎで遊びまくっていたというわけだ。
「ナショナル・ランプーン」に集まってきた若き才能たちが、いちいちあの有名な丸いフォントで紹介される。さらには、アイヴァン・ライトマン、ジョン・ランディス、ハロルド・ライミスなどなども……それにしても、ジョン・ヒューズがまるっきり「その他」扱いだったのは笑った。
 さりげなく流れるスパークス、アメリカ、フォリナーなど選曲もなかなか。

 ダグを演じたウィル・フォーテは『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』の息子役をやってた。ヘンリーには『スター・ウォーズ/フォースの覚醒&最後のジェダイ』でハックス将軍を演じたドーナル・グリーソン。エミー・ロッサムがダグの彼女役で後半だけ出てくる。
 どうやら、ちょっと前に作られたドキュメンタリー『National Lampoon: Drunk Stoned Brilliant Dead』(2015)が元ネタになっているようだが、なぜかアメリカではNetflixに入っているのに日本では未配信のようだ。

by 無用ノ介