エージェント・ハミルトン〜ベイルート救出大作戦〜

テロリスト+英米情報局に挑んだスウェーデンの007はリーアム・ニーソンだった?

HAMILTON: MEN INTE OM DET GALLER DIN DOTTER
2012年 スウェーデン カラー スコープ 90分 劇場公開
監督:トビアス・ファルク
出演:ミカエル・パーシュブラント、サバ・ムバラク、フリーダ・ハルグレン、レーベン・サルマンデル、ミリンド・ソーマン

 意外に傑作だった第1作に続く「エージェント・ハミルトン」シリーズ第2作は、本国スウェーデンで同じ年の8か月後に公開されたスピード仕上げ。監督が交代しているが、出来あがりの方は一気に失速、急激に降下してしまった。邦題もよりによって「大作戦」とは、あまり真面目に取り合っていないのは明らか。
 ただし、お話と設定はあいかわらず面白い。

 カール・ハミルトンは、公安警察のエヴァ(フリーダ・ハルグレン)とパートナー関係になり平穏な日々を過ごしていた。エヴァが前夫ピエール(レーベン・サルマンデル)との間にもうけた娘ナタリーとも仲良し。ハミルトンはナタリーの名付け親なのだ。PLOの交換を暗殺したテロ組織の男をストックホルムで拘束するが、逃走され、公安警察が射殺する。テレビ・インタビューに応えたエヴァは「子供は自由な国で暮らさせたい」と発言し物議をかもす。テロ組織を率いるサウジの富豪の弟アブドゥル・サーマン(ミリンド・ソーマン)は、ナタリーを誘拐。ナタリーがコーランを暗唱するビデオがネットに流される。ハミルトンは、イギリス情報部が誘拐事件に絡んでいると掴む。元傭兵である実の父親ピエール、サーマン確保を目指すPLOのモナ(サバ・ムバラク)が加わり、ベイルートに幽閉されているナタリー救出作戦が決行される……。

 サウジアラビアの富豪とテロリストの関係、援助しているのがイギリス情報部とアメリカCIAという図式がはっきり描かれているのがハリウッド映画と一線を画すところ。彼女の娘を救出するために危険に飛び込むハミルトンは、なんだかリーアム・ニーソンがよく演じている親バカ親父のようだが、ハミルトンは常に冷静だ。今は落ちぶれて煙草ばかり吸ってるやさぐれダメ親父ピエールが元傭兵とわかり、「仲間を集める」と豪語するが、結局誰も現れないという展開もおかしい。それにしてもハミルトンとピエールの微妙な関係、娘と仲間を逃がして自分だけ掴まってしまうハミルトンはどうなる……などなど、さらに面白くなるような要素をすべてぶっちぎって90分で終わってしまう構成にはまったく驚かされる。なにか、サウジとかCIAとかの圧力でもあったのだろうか。劇中で「石油が絡むと皆 口をつむぐ」みたいなセリフがあるが、まさか映画自体もそういうこと?

 暗視カメラをつけて突撃し、逐一本国にネット中継される救出作戦は『ゼロ・ダーク・サーティ』やテレビシリーズ『HOMELAND』を思わせる。アクションといえばそうだが、スパイ・ヒーロー映画のクライマックスにもっていくのはどうかと思うよ。

 今回も「ロイヤル・フィルム・コミッション・オブ・ヨルダン」の協力でヨルダン周辺で撮影されているようだが、ベイルート場面はマカロニ・ウエスタンの“聖地”スペイン・アルメリアでも撮影されているらしい。

by 無用ノ介