FARGO/ファーゴ3

あいかわらず盛り込みすぎだが、例によって半歩ずらした新鮮さが魅力で思わず見続けてしまうヘンテコ犯罪ドラマ

FARGO/ファーゴ3
クリエイター・脚本:ノア・ホーリー
出演:ユアン・マクレガー、キャリー・クーン、デヴィッド・シューリス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、オリヴィア・サンドヴァル

 シリーズ第3作は、もちろんいつものように「事実に基づいた物語」なのだが、この文言の提示の仕方が毎回趣向を凝らされていて、なかには、一部が省略されている回があったような……。それは、毎シーズン一度は登場する、なにやらシュールなSF的展開の部分で、今回はどちらかというと神話?的なエピソードで、わざわざ「R-15」とも提示される回でもあり、まさにクライマックスといっていい。そう、それは第8話。正直、そこからはエネルギーを失っているというか、演出の狙いも定まっていないような気がする。あまりにも大きな演出上のアナもあるのだが、おそらくそれも「わざと」なのだろう。大団円の地味さも、「まあ、8話を繰り返す必要もないでしょうし」ということなのだろう。そういう意味で、なかなか斬新な構成ともいえる。

 2010年、ミネソタ州セント・クラウド。駐車場会社を経営する成功した実業家エミット・スタッシー(ユアン・マクレガー)は、保護観察官をしている弟レイ(ユアン・マクレガー)から「印刷ミス」切手のコレクションを返せと要求されるが拒否。レイは保釈中の美人犯罪者ニッキー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)と結婚するために切手を盗み出そうとする。実は、エミットは謎の男ヴァーガ(デヴィッド・シューリス)に会社を乗っ取られそうになっていた。そんなとき、隣町のエデン・ヴァレーで、同じスタッシー性の老人が殺害され、被害者の義理の娘である警察署長グロリア(キャリー・クーン)が捜査を開始する……。

 今回おもしろいのは、話が一冬で終わらず次の年の春、さらにはその5年後まで進むことだろうか。しかも、途中で警察署長が殺された祖父の過去を探るためにハリウッドまで行ってしまうエピソードもある(その回のオープニングには、わざわざ「実際にロサンゼルスで起こった事件」とクレジットされる)。SF作家だった祖父に起きた事件は、そもそも何の関係もないので無駄といえば無駄なのだが、小説の内容がヘタウマ風のアニメになって、なかなか味わい深い。
 ユアン・マクレガーが天然パーマ風ちりちりヘアの兄とハゲ気味の長髪デブの弟の二役で前半はひっぱるのだが、さすがに途中で飽きる。「カインとアベル」がテーマだということはわかったから……(そもそも二役である必要はなかったような気もするが)……まあ、話題性というか、作品の売りの部分だろう。中盤から、例によっての婦人警官の捜査ぶりがひっぱる。夫と別居中だが、夫はゲイカップルになってるというのはおもしろい。そして、後半に入ってぐん前面に出てくるのは、メアリー・エリザベス・ウィンステッドだ。クエンティン・タランティーノの『デス・プルーフ』で長い脚をぶった切られていたカワイ子ちゃんが、30代になってすっかりドスもきいた怪しい女っぷりを(悪人の前で全裸で立つような大胆さも)見せ、最後には暴走する復讐鬼になって大活躍。囚人護送車で偶然仲間になる口のきけない殺し屋もいい味を出している。よく見たら、「1」でマルヴォ(ビリー・ボブ・ソーントン)を追っている殺し屋のひとりだった。こんなところで捕まっていたのか!

 謎の男V・M・ヴァーガを演じるイギリスのデヴィッド・シューリスは、イギリス人ならでは歯並びの悪さを強調しつつ、不気味さを出している。部下がウクライナ人と中国人なのもなんだか嫌な感じを醸し出すのだが、最後になって急にメンバーが増えるのは不可解。
 最終的に、経済事案みたいになってまとめられるのはおもしろくもなんともないが、バランスの悪さが目立ったおかげで、なんとなくクリエイターが目指しているものが見えるような気がした。たぶん、ノア・ホーリーは、ストーリー展開の岐路に立つたびに、半歩や1.5歩ずらした方向へ向かおうとするのだろう。あるいは、逆方向に85歩とか。つまり、普通の展開からずらしていこうとするのだが、それは後でまとめるときにそれなりにテクニックや力業が必要になる。それでも、何とかまとめてしまうのが『ファーゴ』なる言葉の響き、そしてここでのみ許される、あるシュールな展開なのだが、今回は少々無理が出たのかなあ、という感もある。
 配役もそうで、そもそもハゲデブのユアン・マクレガーにメアリー・エリザベス・ウィンステッドがべた惚れするというのは……にわかには信じがたい。もう少し冴えない女が、かっこいい復讐鬼に変身してくれたらよかったような気がする。
 拾い物だったのは、ロペス巡査を演じたオリヴィア・サンドヴァル。いきなりトイレで女性署長にタンポンを要求し、なかったのでトイレットペーパーで代用する子作り活動中のヒスパニック系交通警察官。飄々とした味でさりげなくいいパスを回す程よいサイドキックスぶりをみせていた。『ジュラシック・パーク』『スリー・ビジネスメン』のミゲル・サンドヴァルの娘である。

by 無用ノ介

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