アクエリアス 刑事サム・ホディアック シーズン1

クリント・イーストウッドだったらなあ、と思ってしまうが、設定だけは最高な刑事ドラマ

AQUARIUS Seaon 1
2015年 アメリカ カラー 各(約)45分 全13話
クリエイター:ジョン・マクナマラ
出演:デヴィッド・ドゥカヴニー、グレイ・デイモン、ゲシン・アンソニー、エマ・デュモン、クレア・ホルト

 1967年、ロサンゼルス。ハリウッド署の刑事サム・ホディアック(デヴィッド・ドゥカヴニー)が、議員出馬も噂される有力弁護士カーンの妻グレースから、家出した娘エマの捜査を依頼される。グレースはサムの元カノだった。サムは、同僚の潜入刑事ブライアン(グレイ・デイモン)の協力を得て、エマがあるシンガーソングライターが主宰するコミューンにいることを知る。その歌手の名はチャーリー・マンソン(グレイ・デイモン)といった……。

 街では白人と黒人が対立、警察ではセクハラ・パワハラが日常茶飯事、サムが以前担当していた地域が黒人地区になりブラック・パンサーが台頭、ブライアンは黒人女性と結婚していて、有力者はみなホモばかり、ベトナム戦争に従軍したサムの息子が米軍の非道を告発しようとしていた。ベトナム戦争、公民権運動、フラワームーブメント、フリーセックス、ドラッグ、ロック……1960年代後半のアメリカを象徴する要素と登場人物のキャラクター設定がうまく組み合わされてストーリーが構成されていて、この時代に興味がある人にはたまらなく面白い。
 もちろん当時のロックや流行歌がふんだんに流れ、自動車、インテリア、ファッションなど、60年代テイストはほぼ完ぺきに再現されている。
 マンソンの登場で、当然予想される悪名高きシャロン・テイト事件へどうつながっていくのか、いやがおうにも期待が高まるが、展開は意外にゆっくりしていて13話で半年ぐらいしか進んでいない。たどり着けるのだろうかと少し心配になるくらいだ。

 惜しむらくはキャスティングで、サム・ホディアックは少々の違法行為も気にしない40代のダーティ刑事(当時としては普通くらいなんだろうが)で、離婚してアパート暮らし。チャンスがあればどんどん女と寝るストレートな男。イメージとしては『マンハッタン無宿』のクリント・イーストウッドそのままなのだが、『X-ファイル』のデヴィッド・ドゥカヴニーは、ちょっと冴えなすぎなような……。少し長髪の覆面捜査官ブライアンを演じるグレイ・デイモンも、『セルピコ』というよりあまりに健全なオールアメリカン風な外見。あれじゃ、犯罪者に疑われて当然だと思うけどなあ……。疾走する美少女エマ役のエマ・デュモン(まぎらわしいからか劇中でマンソンは彼女をチェリーと名づける)はスレンダーできれいなんだが、なんだか可愛すぎて日本の雑誌モデル出身アイドル女優のようだ。刑事を目指してやる気満々の婦警を『海底47m』のクレア・ホルトが演じているのだが、この娘もどこか田舎臭くて潜入捜査には向かない雰囲気。
 こうした、少し残念なキャスティングは、NBCという大ネットワークの作品ということだから仕方がないのだろう。内容的に、ヌードやマリファナ吸引などヤバい描写は欠かせないのだが、どこかさりげなく、どぎつくならないように調整されているように見える。最たるものが、マンソンをイギリスの俳優グレイ・デイモンに演じさせている点で、演技もセリフもすべてが端正というか気品すら感じさせる。まあ“狂気”を外に出すのはこれからなのかもしれないが(ストーリー的には十分出てるけどね)、監獄でまだ存命のマンソンもびっくりの上品ぶりだ。マンソンの曲をちゃんとコピーして歌っているが、これまた普通、というか特徴のない歌にしか聴こえない(実際そうなのかもしれないが)。
 そのおかげかどうか、マンソン・ファミリーの乱痴気ぶりよりも、手当たり次第に女と寝ているように見える刑事サムのほうが困ったやつに思えてくる。コミューンも適度に清潔そうだし、あんなキャンプ生活ならやってみたいと思う若者が続出するかもしれない。

 とりあえず、マンソンがここまでうまく生き延びてきたのは、口がうまいのと、男も女も篭絡するセックスのテクニックだったらしいことはよくわかる。いまのところ、ビーチボーイズのデニス・ウィルソンは出てこないが、今後、やはりシャロン・テイトがどう登場するのか、サムとどう絡むのかどうか気になるところ。配役や描写の緩さはおいておいて、興味は尽きないので続きも見るとしよう。

By 無用ノ介

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