ポルカ・キング

“スクール・オブ・ポルカ”でアメリカン・ドリームを掴め!

『ポルカ・キング』
The Polka King

2017年 アメリカ カラー スコープ 94分 ネットフリックスで配信
監督:マヤ・フォーブス
出演:ジャック・ブラック、ジェニー・スレイト、ジェイソン・シュワルツマン

『スクール・オブ・ロック』のジャック・ブラックが再び音楽でアメリカを変える……のかと思ったら、犯罪実話の映画化ってことで、笑ってばかりはいられないのだが、まあ、憎めないというか、被害者もそんなに怒ってないような……。だって、主人公は「ポルカ歌手」。パロディ歌手のアル・ヤンコヴィックくらいしか知らないが、とにかくアコーディオンが2拍子でせわしなく奏でるダンス音楽だ。主人公は引退したおじいちゃん・おばあちゃんに大人気で、当の本人(ま、詐欺師ですけど)はグラミー賞にノミネートされたことまであったというではないか。劇中で披露される「To Be an American」なんて曲は、ポルカ版「マイ・ウェイ」みたいなバラードでなかなかいい曲だ。

 ポーランドからアメリカへ移民してきたヤン・レヴァン(ジャック・ブラック)は、同じポーランド系移民の老人たちがポルカが好きと知ってポルカバンドを結成するも、全然もうからないので投資を募ることにする。12%の利子で約束手形を発行すると、ポルカのファンの老人たちが投資してくれる。集まったお金でギフトショップ、レコード会社、ツアー会社などを始めるヤン。特に、ヨーロッパを回って“ふる里”を訪れる旅行企画では、なんとローマ法王にも面会できてしまい、老人たちは大喜びで投資を続ける。当局から投資を募るには登録が必要だと注意を受けるが、会社名を変えたり別の州に移ったりしながらどんどんお金を集め、ついに総額500万ドル近くに。ただし、ヤンがやっていたのは、新たな投資で利息を払う、たんなるネズミ講だった。
 が、ヤンの妻マーラ(ジェニー・スレイト)が自己実現のためにミセス・ペンシルヴェニアに出場したことからケチがつく。マーラは見事に優勝するが、審査員が買収されていたとスキャンダルになり、当局も再び捜査に乗り出してヤンは逮捕され投資詐欺で懲役5年の刑に。しかも、刑務所で同室の男に首を刺されて瀕死の重傷を負ってしまう。それでも、刑務所で黒人たちと仲良くなって出所したヤンは、「これからは“ラップ”でいくぞ!」と「ラッピン・ポルカ」なる新曲を唄い、音楽活動を続けるのでした。めでたしめでたし……??

 同時にネットフリックスで配信された(たぶん映画の元ネタになった)ドキュメンタリー『ポルカ・キング:栄光と没落の物語』(2009年)では、投資詐欺被害者の老夫婦が刑務所での事件を聞いて「刺し方が甘いのよ」「首をぐるっと全部切ればよかったのに」とか笑いながら答えているのが、不謹慎ながら面白かった。やっぱり、怒ってたんだ(そりゃそうか)。しかし、そもそもポルカで金が儲かると考えるほうがおかしいし、ローマ法王にも会えたんだから、いいじゃんか、とも思えるが。
 映画のジャック・ブラックは以前よりかなり体重が増えているようで、役作りで無理やり肉襦袢でも入れているのかなと思ったら、実際のヤンさんはもっとスマートで、ビーチボーイズのメンバーみたいな雰囲気のいかにも“いいヤツ”。ジャック・ブラックに騙されるのはいかにもバカみたいだが、本物のヤンさんには騙されてもしょうがないようにも思える。
 映画でも明らかにはされない“ローマ法王謁見ツアー”の謎についてもドキュメンタリーでは語られている。どうやら、ポーランド出身の法王だったヨハネ・パウロ2世はヤンさんと同郷で、ヤンのおじさんが教会で若き法王を教えたこともあったそうな(まあ、噂だけど)。いずれにせよ、ヤンがスーツケースにお金を詰めてバチカンと交渉しにいったのは確からしい。

 ヤンの右腕的存在のクラリネット奏者を演じているのは『ダージリン急行』や『グランド・ブダペスト・ホテル』のジェイソン・シュワルツマン。夢破れて安売り電気量販店(「ラジオシャック」ね)の店員になり、性能のいいソニーのテレビを勧めるが客は「なんでもいいから一番安いの」を求める。なんだかポルカの夢とソニーの没落が一緒に語られているような気分にもなってしまった……。

by 無用ノ介