ガールフレンドデー
「ブレイキング・バッド」「ベター・コール・ソウル」のボブ・オデンカークが製作/脚本/主演!
2017年 アメリカ カラー 71分 ネットフリックス配信
監督:マイケル・ポール・スティーヴンソン
出演:ボブ・オデンカーク、アンバー・タンブリン、ナターシャ・リオン、ステイシー・キーチ
アメリカ人はいつもやたらにだれかにグリーティングカードを送る。クリスマスカードはもちろん、誕生日、冠婚葬祭、祝日などなど、ことあるごとに送るのだ、がそのほとんどはなにか「詩」が書かれている。例えば……
「愛する妻へ そう呼べるだけで僕の心は満たされる。記念日おめでとう」
この詩を書いて3年連続全米グリーティングカード組合最優秀ライターに輝いたレイ(ボブ・オデンカーク)は、グリーティングカード界のシェイクスピアとまでも言われていた。しかし、スランプが続いて会社を解雇され、右手に怪我をしてなにも書けなくなってしまう。家賃も払えなくなったレイに、秘密の依頼がくる。カード用の「詩」を書けというのだ。お題は「ガールフレンド」。前金をもらって悪戦苦闘するレイの前に、レイの「詩」のファンだというジル(アンバー・タンブリン)が現れ、ふたりは恋人同士のように親密になる。そんなとき、突如カリフォルニア州が新しい祝日「ガールフレンドデー」制定の発表がある。なかなか書けないレイを怪しい男たちが拉致して豪邸へ連れていく。現れたのはカード会社の社長ガンディ(ステイシー・キーチ)だった……。
例によって突然配信開始された最新ネットフリックス独占映画で、『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』のソウル・グッドマンことボブ・オデンカークが製作・共同脚本・主演を兼ねているので、なるほど、ボブの企画は何でも実現するんだな、と納得できてしまう。ネットフリックスは即断即決でお金を払ってくれるので、とても劇場公開作では成り立たないような変わった作品でもゴーが出るらしい。そんななかで『ビースト・オブ・ノー・ネーション』(15)や『最後の追跡』(16)のようなネットフリックス映画がアカデミー賞にノミネートされたり、確かな実績が着実に積み上げられているのだが……たまには失敗もあるさ。
オデンカークがウディ・アレンとコーエン兄弟を一緒にしたような「おもろうてやがて哀しきオフビート・コメディ」を目指したらしいこの映画、アイディアはそこそこいいのだが、練りが足りないうえに、演出にセンスがなくて脚本をなぞっているだけのような残念な仕上がりになってしまった。
旧型のタイプライターで「詩」を書こうとするが、変な妄想が見えてくるあたりは『バートン・フィンク』(91)そっくりだ。怪しげな太った金持ち男を『ドク・ホリディ』(71)や『ロング・ライダーズ』(80)のステイシー・キーチが演じているのは少しうれしいが、なんとなくコーエン兄弟映画のジョン・グッドマンあたりがモデルのようにも思えてくる。
急に女の子にモテててしまい、車の中で「エアサプライ」のラブソング「Making Love Out of Nothing at All(邦題=渚の誓い)」を歌っていて隣の車の乗客に笑われるギャグは面白いが、どうも全体となじんでいない。後半にわかに暴力的になるのもコーエン兄弟風かも。
主人公は「自分の感情を切り売りしたくない」とカードライターの仕事から足を洗うのだが、できればカード(詩)の力で悪事をくじくぐらいの面白いアイディアを盛り込めばよかったのに。
ファムファタール役のアンバー・タンブリンは、日本の怪獣映画にも出ていたラス・タンブリンの娘だが、顔が小さいのに体つきが妙に大きい不思議な女優。タランティーノの『ジャンゴ 繋がれざる者』(12)にもちょっと出ていた。
2/17/2017 by 無用ノ介